いとしい、と。
ないしょごと Ver.8
にっぱりと結人は笑う。
「えーし」
「何?」
俺はそっけなくいつものように返す。わざわざ振り返ることもせずに、本の頁をめくる手も止めない。
「ねぇ、えーしってば」
「だから、何?」
結人は少しむくれたようにまた俺を呼ぶ。こんな時間が好きだと思う。
でも、さっきと同じように活字に落とした視線は上げない。
「えーし!!」
焦れた結人が俺の手から本を奪い取る。
「だから何って言ってるでしょ」
仕方がないというように俺は結人の方を向く。本を返せという意味で手を差し出したけど、こんなものはただのポーズ。本当は、あの本は一度読んでイマイチだったもの。結人と会うときにはいつだってそんなものばかり。
だって、相手のことを考えていたい。
「えーし」
俺の名前を呼んで少し上目遣いのように睨む。結人のその目が雄弁に語る。
その少し拗ねたような姿が堪らなく可愛くて俺は小さく笑った。その顔が見たかったと結人に教えたら、彼は怒るだろうか。
わかってるよ。
「結人」
ちゃんと呼ぶと結人は凄く嬉しそうに笑って、
「えーしが名前呼ぶのってすっげー好き」
「そう?俺もそうやって結人が呼ぶの好きだよ」
そう言ってベッドに座っている結人に啄ばむようなキスをする。
体を離すと結人の顔がほんのりと赤くなっていて、もう一度キスしようとしたらさっきの本を出されて邪魔された。
今晩は泊まり決定。
目の前に出された本は小さく投げえて机に放って覆い被さる。
「え、えーし…?」
慌てた結人が何処か縋るように見つめてくるけど、それは逆効果だと気付かないと。当然、俺から教えたりはしないけれど。
「何?」
今日何度目かの問いを発する。
「ま、まだ……ん」
またキスをした。
Fin
多紀は間違っても英士を甘く呼んでくれなさそうです。偏見?寧ろ郭若書いての第一声が多紀の話になるのは何故でしょうかね。
非常に初々しいなと今更ながらに思いますね。付き合いだしてまだ日が浅いんだろうか、このふたり。なのにやることやっているのか、郭英士。
この英士の行動は子どもっぽいのか変態なのか。まぁ、英士は変態上等だとは思うので問題はないんですが。
改稿04/02/07