甘えて
ないしょごと Ver.6
整った英士の横顔を見てれば俺は飽きない。いつまでだって見ていたいと思うのだ。
でも、やっぱり一緒にいるのに本に英士を取られっぱなしなのは癪で、俺はいつものように笑った。
「えーし」
なんとなくだけど、“英士”より“えーし”と呼ぶほうが俺は好きで、ふたりきりのときはそう呼ぶ。一馬がいたらちゃんと“英士”って呼ぶけど、“えーし”って呼ぶときはなんだか甘えられる。
「何?」
でも、返ってくる声はいつもどおり素っ気無くて、それだけじゃなくて今も本を読んでいる。
こっちを向いてほしくて呼んだのに、これじゃ意味がない。
「ねぇ、えーしってば」
今度は少しむくれて言ってみた。ホントにむくれているんだけど、こんな感じは実は嫌いじゃない。
「だから、何?」
でもこの反応はないんじゃないかと思う。英士は相変わらず本で、相手をしてくれる雰囲気じゃない。せっかくこっちは一応泊まるつもりで遊びに来たのにそっちがそうなら帰るぞ、と俺は怒りのボルテージを上げた。
「えーし!!」
俺は英士が読んでるなんだか訳のわからないやけに小さい文字の文庫本を取り上げた。
「だから何って言ってるでしょ」
手と一緒に視線を上げはしたけれど、
「えーし」
俺は少しばかり恨みがましく睨んだ。だって怒っているのだ。しかも、ココロの狭いことにこんな本にまで嫉妬している。
そんな自分をちょっと嫌だと思っているのに、英士はその俺を見て小さく笑った。英士が偶に俺に、いやいや俺だけにしてみせる笑い方で、英士の願いが叶ったときとかによくそうやって笑う。一馬にはよく優しめに笑ってやってるけど、そんなんじゃないやつ。たぶん、本人は違ってるってコトに気が付いてないと思う。
「好きだよ」と言うみたいなので。その顔で、
「結人」
俺のことを呼ぶから無茶苦茶幸せ気分で俺も笑う。
「えーしが名前呼ぶのってすっげー好き」
正直に言う。
「そう?俺もそうやって結人が呼ぶの好きだよ」
座ってた椅子から立った英士が啄ばむキスの間に「二人きりのときじゃないと言ってくれないし…?」なんて言う。まだ続きそうな言葉で、英士が意地悪そうに笑った。あの笑い方は確実に英士本人は無自覚だ。
俺はなんだか顔が熱くなって、また近づく英士の目の前にさっきの本を出した。流石に止まったけど英士はその本をあっさりと机に放り投げて覆い被さってくる。
「え、えーし…?」
まだ、夕方。陽が高いのにと嫌な予感と共に慌てる俺に、英士は余裕顔で「何?」なんて言って。でも、
「ま、まだ…ん」
言葉を途中で奪われた。俺が何を言いたいのかを察したらしく「すぐ暗くなる」なんて言われて、俺はまた赤くなる。
俺の様子を満足げに見た英士は「それに」と更に続ける。凄く艶っぽい笑みで、
「結人の“えーし”ってソノトキと同じで凄くそそる」
もう呼ぶもんか!と思っても、どうせ今日もこれからも呼ぶ。
Fin
あー、もー、本気でこの結人可愛い性格してますよ。普通に可愛い。でも、私が好きな結人は大人な考えの結人なんですね。これ書き上げたときから私も変わってるんでその所為でしょうか。U-14のなかで実は一番冷めた考えしてるんじゃないかな。ほんとはね。
そういえば快新か新快でも出来そうだとか今思いました。でも快斗ならおとなしく新一が読み終わるの待ってるかも。邪魔されたら凄く怒りそうだし。本が絡んでいる所為です。でも、どっかのサイトさんでもうやってそうだから書きませんね。
改稿04/02/