ひかれあう
磁力
引き合う 強さも
想いも
弾き合う 強さも
想いも
全ては
同じ
杉原はすっと視線を移した。
逆に視線の先にいた郭が杉原を見る。それは睨む、といった表現の方に近かった。
「英士、どうした?」
楽しげに笑う結人に郭は相変わらず表情の読みにくい顔で見返した。
「どうしたって、何が?」
「何って睨んでるぞ。杉原のこと。そんなんじゃ仲良くなれないぜ?」
したり顔で言う結人に、
「どうして俺が杉原と仲良くしなきゃいけないわけ」
冷ややかに言い切る。
「変わんないなぁ、英士は。チームメイトだぞ」
「だから?」
まるでいたちごっこのように先には進まない会話。結人は英士との子供っぽいといえる言葉の連続に気付かれないように小さく苦笑いをする。気付かれたら極寒の恐怖に襲われるからだ。
「あー。はいはい。もう言わねぇよ。じゃ、外交役の俺が綱渡しでもしとくかな」
杉原と風祭がいる方へ踏み出す結人に郭は手を伸ばす。
「英士。いくらお前でも俺に命令なんかしちゃダメだぞ?」
くるっと向き直った結人が悪戯盛りの子供のような口調で言い、郭を見た。ただ、その目が違う。
「本当に、結人は…。らしいよ」
これ見よがしに溜息をついて言った郭に結人は軽く笑う。
「そりゃぁね。…杉原!と風祭!」
少し走った先にいる二人に結人は何の衒いもなく当たり前のように声をかける。
「若菜くん」
「どうしたの?若菜くん。ひとり?」
笑顔。
ちくりと。疼いた胸の中心に郭は知らず眉を顰めた。
「そ。だって、ほら。俺が一番外交的だし」
「若菜くんったら」
楽しげに笑う声。
呼ぶ声。呼ばれる声。
「あ。じゃ、僕、もう行くね」
「おう!またな!風祭」
「またね、カザくん」
風祭が不破や水野に呼ばれて帰っていけばそこに残るのは二人だけ。
つきん。
唇を噛み締め、郭は二人がいる方向から目を逸らした。
それでも届く、楽しげな声に郭は逆の方へ向かって歩き出した。二人の姿が見えなくなるまで。その声が聞こえなくなるまで。
話をしている間は丁度その視界の中に郭が入るようにしていた杉原が、ひとつ、溜息。
「意味深だな」
そんな台詞を笑顔で言ってのける。
「そんな風に意味深だなんて言っても雰囲気でないよ。若菜くん」
困ったように笑う杉原はそれでも、もう一度溜息。
結人の悪戯な目が雄弁に「何?何?」と語るのに杉原は表情を変えないままに答えた。この無邪気なようで違うような結人のことを杉原は決して嫌いではなかった。
「カザくんが行った後でよかったなって思っただけだよ」
心配性でしょ、彼って。自分のことより人のこと優先で。きっと凄い心配するんだろうなと思ったのだと伝える。
「ふーん。で?一度目の意味は?」
「…わかってることを訊くのって人が悪いよ?」
目をきらきらとさせている結人とにっこりと花も恥らうように笑う杉原。こうなった場合、謝るのは、
「ごめんなさい。俺が悪かったから!」
結人だ。心なしかその笑顔は引きつっている。
いかにも純真そうな笑顔でありながら、与えるプレッシャーは計り知れない。この笑顔に逆らえばどうなるのか、推して知るべし。
「あはは。そんなに気にしてないから安心していいよ。それに気付かれちゃった僕も甘かったんだしね」
にこにこと笑うそれには先程のような含まれたものはなく、結人はほっと息をついた。非常に心臓に悪い。
「英士、どっか行っちゃったな」
「そうだね。余程僕と一緒にいるきみを見たくないみたいだ。郭は」
ふふと笑って見せた杉原を結人はじっと見る。杉原は確かに笑ってはいたが、決して笑ってはなく。だから結人は凝視してしまったのだが、それに杉原は困惑したような視線を向けた。
「どうしたの、若菜くん?」
「ん?んー。…杉原さぁ…」
この少年にしては珍しく言い難そうにする。歯切れは悪いし、あちらこちらに視線を飛ばす。自分に言いたいことがあるらしいと思い至った杉原は小さく笑った。仕方がないと思って浮かべたその小さな笑みは苦笑だったのだが、だからこそなのか彼に良く似合っていた。苦笑が似合うと言われても嬉しくはないだろうが。
「何を言っても怒らないから、言ってもいいよ。若菜くん」
出された助け舟に、というよりも内容に結人はたははと笑う。前以って許可が出るとなると出なかったときが恐ろしい。
「じゃさ、言わせてもらうけど。杉原は別に無理して笑わなくてもいいから」
「?」
「だからさ、さっきとか見てて思ったんだよ。なんか無理してるっぽいよな〜って。俺はこうだし、一馬はばかじゅまだろ。まぁ、一馬は関係ないか。で、英士はああで、杉原は当たり障りのない笑顔じゃん?や、ちゃんと笑ってるときもあるけどさ。俺といるときもなんか微妙だし。あと、さっき?なんか冷たいっていうか…。
あー、もー。うまく言えねー!でも、俺はさ、意外と鋭いし?自分で言うなって感じもすっけど。知った以上は杉原の話だって聞けるからさ。一人で無理すんなよ」
きょとんと珍しく無防備な顔で杉原は結人を見ていたが、途中で混乱した結人はそれに気付かない。言ってる途中で恥ずかしくなったのもあるのだろうが強引にそう言って「な!」と念を押す。
それに杉原は一瞬だけ泣きそうな顔を覗かせた。それは悲しみによるものではなく。
「だって、俺らって実は前も仲良かったりしたし」
それはロッサとは関係ないときだけに限定していたけれど。
「そうだったね。ありがと、若菜くん。でも、僕のコレは一方通行でどうにかなるものでもないから。郭ってあれでにぶそうだし。大体僕に好かれてたって嬉しくなんてないだろうし、よく睨んでるしね。郭のこと嫌いになるまで偶にこうして愚痴聞いてくれる?」
すぐに消えたその顔の代わりにまたいつもの笑顔で言えば、
「だから、それ。笑わなくっていいんだって」
結人は呆れたように諦めたように大きく肩を落とすという芸当までして返す。そして内心でただ呟いた。
(杉原も結構ニブイだろ。確かに英士はよく睨んでるけどさ。あれは…)
「違うよ、若菜くん。これはもともとなんだ。直ったりしないって」
「そういうことにしてやろう」
偉ぶって、今の雰囲気をどっかにやるように彼本来の悪戯っ子の目を輝かす。
「あと、俺。友達は名前で呼んで呼ばれる主義になったんだけど」
「わかったよ、結人くん。また、今度の練習のときにね」
暗くなり始めた空を見上げた杉原に、
「おう。またな、多紀」
結人は待たせた親友たちの方へと歩き出した。
(少しは引っ掻き回してやるかな)
駆け足になりながらそれの結果を思って一人ほくそえむ。
Fin
結人出張りすぎー!!書き上げたときの私の台詞(らしい)です。まんまですけどね。というか、主役は結人ですか?な、ノリです。上の後に「だって好きなんだもーん」と続きます。ええ、好きなんです。結人。微妙にいい性格をしてる設定だと更に好きです。
これは書いてるときはこれだけの短編だったのを覚えています。書きあがったときに何故だか続くことになってました。私の中で。寧ろすべて私の中で。全5話ですが、2,3,4話は短いので。でもまとめない。
なんだか色々と捏造してみました。特に結人と杉原が実は仲が良いとかいうあたり。あり得ないよ。しかもそのことを英士は知らないという。えへ。二人が付き合うことになってもバレルまでは絶対言わないんだろうな。理由は面白そうだから。とかで。
結人は冷たい英士は苦手とはしてるけど、彼とは同じ位置にたっているので基本的に敵なし。無邪気な傲慢。いえ、対等です。(訳分からない説明だ)でも、たっきーには怯えが入ってます。結局は二人と普通にいられるタイプ。結人が負けるのは潤相手くらいかな。(潤結とか裏設定でも組もうかな)
お粗末です
2003/11/01〜