望むもの―Side:10―
望むもの
誰よりもお前を知っている、お前を理解できる人間でありたいんだ。俺は。
何て言われようとも。
どんなに貪欲であろうとも。
同室者の姿が見えなくなって十分。三上は自分的には十分待ったと考えて部屋から出ることにした。なんてことはない。探して連れ帰るだけだ。
一応居場所、というのか目的地は聞いていたのだし、行った理由も知っている。そんな必要はないとは思うのだがそれはそれ。人の心なんてそんなものだ。とは言ってみたところで、三上は自分のこの行動が独占欲と嫉妬に起因していることを知っていた。だが、それこそ人の心というもので、知っているところで意味はないのだ。
松葉寮には渋沢を狙う狼や懐柔しようとする輩が多すぎる。恋人である三上が再起不能にしてやろうと思いつつそうやって探しにでるのはおかしなことではなかった。これにも独占欲と嫉妬が多分にあるのは疑いようもない。しかし、当事者である二人の幸せの前にはそんなものは問題とはならない。向けられるその感情に渋沢も確かに嬉しいと感じているのである。
その三上がやっぱりついて行けば良かったのか、何て思いつつのんびりと歩いていると不意に三上にとって渋沢の中の位置づけの見当が付けづらい相手の声が聞こえた。
「─────。お疲れ様です」
(全くだ)
三上は口許を皮肉げに歪めた。
(あの駄犬が)
見ずとも渋沢が曖昧に笑う様をありありと思い浮かべることができる。
こうして声が良く聞こえる以上目的の相手がすぐ近くにいるのだろうが、交わされる会話に出るわけにもいかない。
そうやって三上が出るに出られずにいる間、渋沢と笠井の気心の知れたもの同士らしい会話がなされていく。三上はそれを聞くともなしに聞きながら、笠井が人がいないときに呼ぶ「克朗さん」という単語が腹立たしいと改めて認識した。
渋沢は三上が名前で呼ぶのを嫌がるのだ。どうも恥ずかしいらしい。真っ赤になった挙句「止めてくれ」と言うものだから、可愛いのだが下手に繰り返すと怒った渋沢が暫く許さないのだ。夜であればまた話も変わるが。
ふと、進められていた会話の内容に笑みが広がる。それは誰かが見ていたなら見惚れるか、赤くなるかという艶やかさだった。
自然と浮かんだそれは三上には珍しい他意のない笑みだった。
会話の終わりを告げた笠井がこちらに歩いてくるのを足音で知ると三上は一歩分下がった。
前を見たまま通り過ぎていった笠井を見送った三上は喉の奥で笑う。
「当然だろ。他に誰がいるってんだよ」
壁に寄り掛かった三上は、
「後5分だけくれてやるよ。特別にな」
静かに目を閉じた。
Fin
短いですね。意味あるのかなぁ、この続き。無くても支障ないんですよね。
しかも、最後でみかみん偉そうですけど、貴方、覗きですよ(笑)。
題名にリンクしてないし。いいのがあったらBBSにどうぞ。寧ろお願いします。
2003/06/07