ゆるやかないちにち。1110リク
ある休日の日
薄暗い部屋にカーテン越しの陽光が差す。
控えめに目覚まし時計は鳴り響き、起床時刻だと主張した。
大きなベッドの片側がそれに反応し、止めようと手を伸ばすともう片方がその手を捕らえ、驚いた相手の唇にキスをする。
「オハヨ」
艶やかに笑んで見せた三上に渋沢はほんのりと顔を赤くして笑い返した。
「おはよう」
言葉に続けて渋沢も三上がしたようにキスを返した。ただし、彼がしたのは口の端に、だけれど。定着しだした朝の挨拶である。
そのまま起きようとする渋沢の手を三上は摑んだまま引き寄せる。腕に抱きこんだ渋沢には昨夜の情事を窺わせる紅い跡が散っていた。
目に甘い色を滲ませて覗き込むように見つめてくる三上に渋沢は咄嗟に顔を俯けた。決してそれが真実ではないと知っているし、特に渋沢に対して三上がそうであることはないが、普段冷めた印象を与える目にこうまでもはっきりと見せられると恥ずかしくて堪らない。
曰く、いとおしいと。
「お前さ、いい加減慣れろよ?」
くつくつと笑を湛えて三上は髪の隙間から覗く額に唇を落とした。
ちょいちょいと前髪を引っ張り渋沢に顔を上げるように促す。赤味の引いた顔を上げ目を合わせた渋沢に問いかける。
「今日、どうしたい?」
のどかな朝である。
もうすぐ10時にかかる頃にのんびりとした朝食の洗い物を終えて渋沢も漸く食後のコーヒーを口に含んだ。
「三上、本当に良かったのか?」
ソファで一足先に寛いでいた三上はその言葉に首をひねって後ろを向いた。
「ああ?かまわねえよ。久々に重なった休みだしな。家でのんびりとするのもいいだろ。ためにためた録画物もあることだし?」
寧ろ下手に外出しようものならファンに見つかりしだい恐ろしいことになるだろう。分別はあるはずなのだが、どうしたわけか。
過去の思い出したくない思い出が過ぎるのと同時に三上は自分の考えを打ち消す。帽子と眼鏡で誤魔化されるのだからそんなに考える必要はない。
とりあえず今は隣に座った渋沢の左手に自分の指を絡めれば、三上の右手に金属の冷たさが伝わる。きちんと左手薬指に嵌められた、二人の証の指環。
「なぁ」
三上の行動を見ていた渋沢に三上は視線を合わせる。呼びかけておいた為か、視線はすんなりと絡まった。
「気長に待つとは言ったし?世間ではこれで通ってるんだから仕方ねぇだろうがいつになったら呼んでくれるわけ?俺の名前は。なぁ、克朗?」
目は合わせたまま指環にキスを。
伏せることのない視線に晒されたまま、指環とはいえ、いや、指環に、だからこそか、キスを受けるのは人が考えるよりも恥ずかしい。特に、その行動が確信的であればあるだけ、羞恥心が煽られる。三上の行為で渋沢がどう反応するか窺っているから性質が悪い。今更見るまでもなく知っているくせに。
「もう、暫くしたら…たぶん」
指環にキスするのも自身に向けられる眼差しも網膜に刻み込めるほどに見せつけられた渋沢は三上の艶やかに濡れた漆黒の眼からコーヒーの入ったマグの底でも見ようとするかのように水面に視線を注ぐ。
「ふーん?」
気のない相槌を返して、三上はゆっくりと絡ませていた指を解く。不意に離れてしまった感覚に渋沢はマグから目を移し三上の右手を追った。
無意識に右脚が上になるように足を組んだ。その膝の上にこれまた右の手が上になるように両手を組むと、置く。
彼のその動作は酷く様になると、渋沢は思う。
「出会って12年、付き合って10年ちょい、結婚して3ヶ月。俺としてはそろそろ常用してほしいもんだけどな」
組んだ指の上に顎をのせてにやりと笑う。
「三上…」
困惑した渋沢の顔をちらりと見て、三上は苦笑する。その付き合いの長さ故に渋沢がなかなか呼び名を変えられないことなど良くわかっている。十数年に及ぶ呼び名を今更改めるのは違和感が付き纏って仕様がないのだ。
「ま、気にすんな。時間は長い。そのうち自然と変わっていくさ。
で、どの映画を先に見る?サスペンス、ホラー、アクション、SF。何でもありだぜ?」
先に惚れた奴のが弱いってのは真理だな、と思いつつ、分類別に録画したDVDを指差した。渋沢は三上の示した逃げ道にのることにしてDVDのひとつをセットする。
「すまん」
それでも謝ってしまうのが渋沢の渋沢たるところだろう。
「ばぁか」
ふっと優しく笑んで渋沢の頭をぽんと叩く。
「夕飯、楽しみにしてるわ」
「あぁ」
顎のラインをなぞってから下ろした手をきゅ、と渋沢が握った。その手を引いて、三上は渋沢を自分に寄り掛からせる。それから幾つもキスを交わす。
「そろそろ映画見るか」
「そうだな」
けれど、再生ボタンを押す指は伸びない。
暫くすると、寄り添うふたりはそのままに部屋に柔らかな空気が満ちていく。眠りへと誘われたふたりを守るように。
ふと、微笑の気配に三上は目を覚ます。
窓から差し込むのはあたたかな夕陽の光。カーテンがなければさすがに眩しかっただろう。
「起こしたか?」
上から降る声に三上は顔の向きを変える。
「いや。いつから起きてた?」
「20分くらい前に」
「そうか」
一度三上は目を閉じて、眠気を追い払うように目を開ける。
「ずっと、膝を枕に借りてたか?」
呟く三上に渋沢は違うと返す。
「俺が起きたときは俺が三上の肩を枕にしてたぞ」
「そうか」
「あぁ、起きるか?」
渋沢の問いに三上は無言で腕を伸ばした。彼の首に手を回して引くと心得たように渋沢が覆い被さる。唇を重ねて、甘噛みして、舌先でなぞり、再び合わせ、離れた。決して濃厚なわけではないけれど、ゆっくりと確かめるように触れるのに渋沢はやはり少し赤くなる。
渋沢が体を離すのに合わせて三上も体を起こす。そのまま穏やかな笑みを浮かべて立ち上がった。窓から入る光は今がそれなりの時間だと告げている。
随分と長い時間眠っていたものだと感心しながら座ったままの渋沢に三上は振り向いた。
「夕飯は決まったか?」
「三上の好物を」
流れるような動きでキーボックスから一つ、取った鍵を揺らす。
「買い物には付き合うぜ、奥さん?」
Fin
うわー。初リク貰った作品がコレってどうですよ。
全然駄目ですな。(自分突っ込み)新婚?新婚??始めの方の克朗さんはなんだか初々しすぎはしませんでしょうか。何やら「初めての朝」な感じです。(一辺死んで来い自分)そのくせ、後半はなんだか熟年夫婦なのりですし。
ストーリーがないですよ。「奥さん」て呼ばせたかったのがバレバレ。(だって夫婦だし)
すみません。すみません。すみません。
返品可です。書き直し受け付けます。「こーじゃないのよっ」と、どうぞ言ってやってください。
MMさんのみお持ち帰り可です。(いらないって言われそうだけど)
本当に書き直しますから。
やっぱりスランプ中に書くんじゃなかった。反省です。なんだか、ほのほのバカップルってかんじ…。
ついでに。「卒業」後の人たちとは違います。こっちは二人ともプロなので。
24,5才の設定です。(寮部屋が一緒で、出会ったのが4月。付き合いだしたのが中2の中ごろ。)
脱稿10/14/03 改稿10/19/03