世界の中心でアイを叫ぶ
表面上は穏やかに。
周囲に安心を贈ろうとする渋沢は、
だからこそ傷が深い。
心の中に一切を覆う彼に安堵して、
気付くことさえない。
見えないように隠された傷が傷だということさえ
忘れ果てる。
知らずに放つ致命傷にすらなる刃さえも
笑顔で受け止めるから。
誰もわかっていない。
その傷に。
日々、酷くなっていることに。
渋沢自身であっても、酷くなっていることには気付き乍ら、
死に至る傷だと、
自覚はない。
初め大量の鮮血を流していたきずは、
徐に膿み始める。
治る暇さえ与えられずに重ねられた悪意無き刃によって。
その傷は大量の鮮血を流す。
傷は膨れ上がり、膿む。
そして死んだ黒い血を流す。
えんえんと。
流す。
傷は止まる隙もなく拡大していく。
赤黒い血は細くえんえんと、永遠と流れる。
傷は血を流す。
覆い隠された奥深くで。
果て無き果てで。
血を
流す。
渋沢はやわらかく笑う。やさしく笑う。
致命傷にまで至った傷に気付けずに。
致命傷までに追い込まれたことに、
気付かずに。
すべてを許容して笑う。
殺され乍ら。
死に乍ら。
笑う。
澄んだやさしさで笑う。
「三上?」
「 」
贈られる真実のことばに。
心からのコトのハに。
嬉しそうに目を細めて。
安心したように笑う。
彼にだけに向ける笑顔で。
赤黒い死んだ血に塗れ乍ら、
笑う。
透明に過ぎるほどに、
ただ────────────。