こんな裏話






実は、その後






 久々の休日にベッドの上でごろごろとだらけていた結人は急襲にあった。
「結人!!」
 一応、ドアは静かに開け閉めはされたものの英士の大声は階下の結人の母親にも届いただろう。それはもう、しっかりと。
「何だよ、英士。いきなり」
「ちゃんと潤の手綱握っといてくれないと困るんだけど」
 いかにも鬱陶しげに見上げる結人に英士は挨拶も何もすっ飛ばしていきなりそうのたまった。
「なんだぁ?」
「恋人だろ、潤の」
 どうも頭に血が上りきっているらしい親友に、結人はベッドに座り直し、とにかく手振りで座るように示す。苛立たしげに結人の隣に座った英士の頭をとりあえず結人は軽く叩く。
「何がどうで手綱を握れって言ってんのか説明しろって言ってんだろーが、俺は」
 いつもであれば多少の報復が英士から送られてくるものだが、今度ばかりは英士も素直に話を進める方向に思い留まった。このことに関してはあまり結人の機嫌を損ねないほうがいいのだ。
「だから、潤が人の恋人にマニキュア贈ってたんだよ。潤は結人の恋人でしょ。どうにかできないわけ?」
「ああ」
 一方、結人はそれを聞いても特に思うところはない。
「だって、それって杉原が爪が剥がれたって言ったからだろ?別に英士が気にすることじゃないじゃん。第一、自分で言えって。潤はお前の従兄弟だろ」
 寧ろ呆れたように英士に返す。
「結人だってわかってるでしょ。潤が俺の言うこと聞くわけないことくらい。面白がってまた贈るに決まってるよ。でも、結人が嫌がったら流石に止めるでしょ。潤でも。随分冷めてるけど、結人は自分の恋人が他の奴に贈り物しててもいいわけ?」
 不審に思った英士の問いに結人は机の上を指した。机の一角にあるのはヘアメイクの道具に並んでマニキュアのセット。それは一見多紀の部屋にあったのと同じようであったけれど、一目で違うとわかるのはマニキュアの色。
「結人にも贈ってあったの」
「つ−か、俺のが先だよ。当然なことながら。いくら潤でも恋人より先にそういったのは贈らないだろ。薦めたの俺だし」
 さらりと付け足された台詞に英士がひんやりと笑みを浮かべる。
「結人?」
「だからさ、潤から『多紀がこう言ってたんだけど、結人にあげたのと色違い贈ってもいい?』って聞かれたからいいぞ、と」
 言って、机から幾つか持ってくる。
「ん?」
 見るか、と差し出されたビンを英士は至極当然のように受け取った。改めて見なくともわかる、それは鮮やかな赤。
「杉原のって爪の色だろ?抵抗がないように」
「そうだよ。結人のはいくら結人でも派手じゃない?赤っていうか、真紅っていうか。もっと柔らかいのも一応あるにはあるみたいだけど。もっと他の色があってもいいんじゃないの?せめて青系とか」
 手のひらの上でビンを転がすようにしながら英士が眉を寄せた。これは男がつけるには少し、躊躇うような色じゃないだろうか。
 従兄弟が贈った色に思わず難色を示していると結人は笑って言う。
「英士ってさ、一見クールじゃん?実は結構激情家だけど。だから何も知らない周りの奴が英士を連想しそうな青系は嫌なんだと」
「は?」
「それな、潤の色なんだって」
 中でも一際赤いマニキュアを自分の手に戻して結人はくすぐったげに笑った。
「だからさ、韓国って赤だろ?それに情熱の色だから、これは潤が俺を想う色なんだってさ」
「潤らしい。大方同封されてた手紙には『俺のことを想うように、想う度に塗ってね』とでもあったんでしょ」
 気障な潤のことだから、と言うと結人はおしい!と言って携帯をひらめかした。
「ちょうど蓋開けたときに電話で言われた」
 普段距離があるからこういうのは結構くるんだぜ、と高校生にもなってもまだ、悪戯っ子のような笑顔を覗かせる。
 ずっと続いている遠距離に耐え難くなることも多いだろうに結人は笑顔が多い。それは潤のこういったプレゼントが影ながら支えていたらしい。
 愛しげに小瓶を弄る結人の手に目を留めて、英士は「あ」と声を漏らす。何と目で聞いてくる結人に英士は軽く頭を振った。
「いや。付けてたんだなと思っただけ」
「英士、気付くの遅すぎ。これだぜ?」
 そう言って結人は手にしていた小瓶を翳す。贈られた中で一番鮮やかな赤のマニキュア。
 一度気付けば確かに認識できるものの、さっきまで本当に英士は気付きもしなかった。ほんの僅かな違和感さえなかったのだ。その爪は何度となく英士の目に晒されていたにも関わらず。始めのうちこそ頭に血が上っていたが、それもすぐに引いていたのに。
 じっと見ていて英士は納得した。
「よく似合ってるよ」
 結人は嬉しそうに破顔した。
「そりゃ、潤の色だからな」





               Fin
 だから?とか聞かれると非常に困るのですが、昨日お風呂で浮かんだのでそのまま採用。(逝って良し!)別に潤はたっきーに気があるわけじゃないんだぞ。ぐらいの気持ちで。
 ついでにU-14たちの基本的な関係はこんな感じってだせればいいなと思ったのです。
ようするに、郭多紀のとき、潤結。この二人は素でバカップル。遠恋ですから。一馬はノーマル。かわいい彼女さんがいるのですよ。
 見苦しいものをすいません。お粗末さまでした。





          脱稿03/12/29