取り戻した幸福
やわらかな雰囲気を保ったままルークの部屋に案内されるなり、くるり、とルークは3人を振り返った。
10歳と13歳の差は小さいようで大きく、どうしたってシンクたちは見上げるようになる。
「改めて、初めましてイオン」
真直ぐな翠の眸に見つめられ、イオンは差し出された手を握る。
「初めまして、ルーク」
「シンク」
シンクは黙ってその手を握った。お互いまだ、ただ子どもの手を。
「初めまして、アリエッタ」
「初めまして、です。ルーク」
友達として、何も変わりなく差し出された手をアリエッタは戸惑いながら握り返す。きっとそれだけで笑ってくれるとわかるからだ。その予感の通り、ルークは笑う。自然アリエッタも笑い返し、二人は握手の形のままにこにこと笑う。
残された二人が面白くない。その思いのまま二人を引き離そうとするなり。タイミングよくノックが響いた。
「メアリ?」
許可を含んだ呼びかけに扉が開き、ルークの母親でもおかしくない年齢のメイドが歓迎の微笑を浮かべる。
「紅茶をお持ちしました」
メアリに続いて使用人が二人。
「皆様でお召し上がりくださいませ」
休憩用に使っていたテーブルにクロスがかけられ、椅子が3脚プラスされる。当たり前のように4人でテーブルを囲んでいいと用意される。ルークの希望が先んじて用意されている。今、ルークから絶大な信頼を得て側に仕えているのは彼女なのだとすぐにわかった。
席を整えて出たメアリを何となく見送り、4人は顔を見合わせた。
「仕切り直そうか」
何故だかうまいこと感動の再会といかないシンクたちに問いかけたイオンに「必要ないよ」とシンクは言う。
「久し振りだね、ルーク」
必要としたのはその一言だけだ。
たった今までにこにこと周囲にまで明るさを振りまくような光のような笑顔は一瞬で泣き顔に変わる。眉はハの字を描くように下がり、翠の目はあっという間に潤んで水の膜を張った。
「相変わらず、泣けてなかったの」
「シンク!!」
そのきれいな翠から涙が零れ落ちるのとルークがシンクに抱きつくのと、どちらが早かっただろう。嗚咽で震える体をシンクはしっかりと抱きしめる。
その涙が再会の喜びか、別れの哀しみか。外から見るイオンにはわからない。けれど、泣くことができなくなっていたルークが決して幸せであったはずがないし、シンクの話にあったようにルークは被験者たちの犠牲であり続けたのだろう。泣くことが認められないほどに。
ルークは今、大事にされているように見える。それでも、傷つけられた過去はなくならず、失ったものは還らない。たとえ今、幸せと思えても。
ルークは声を上げて泣かない。泣くことを恐れるかのように。その姿だけでも哀しくて、隣で泣きそうなアリエッタの手をイオンは握った。
イオンも、どうしようもなく、哀しかった。
伝播する哀しみ N→
ルークは泣けないイメージがある。あの同行者どもって誰が泣いても気にしないけど、ルークが泣くと責める印象。
そもそも公式ルークはアクゼリュス前はヴァンとキムラスカの、後は同行者の都合よく使う為の存在となってる。ルークは常に誰かの為に己を鬻ぐ存在で、誰かによって否定され、叩き潰され、殺される存在。
これはあれか。人間が如何に醜悪で自分勝手かを描いたゲームか。主人公なのに救いがないものな。人格を破壊されて都合のいい人形になったら許して認めてやってもいいとかって世紀の犯罪者共にいわれるんだもの。ルークの罪の前にお前らの極刑のほうが先だ。
それはさておき。シンルクです。二度目でメアリという安心できる存在となんだかやけに仲良くなれた使用人らと騎士たちですが、ルークはどうしたって孤独でした。世界に独りきりだった。それがようやっとルークを根底から理解してくれる存在と会い、安定します。
私的だけど、公的に残る交流なので、これからもどんどん会えます。それが狙いのダアト緑っ子です。
13/01/20