せめて お前を守る王になりたかった
どうせ終わるなら、はやく
すまない。
すまない、すまない。
すまない。すまない。すまない。
「事実上の宣戦布告です」
ルーク――― …。
壁に遮られ見えないものの、美しい庭園を背後にして玉座に鷹揚として座す男は皮肉げな気分で獰猛に笑みを刻んだ。男に若干の苦手意識を抱いていた彼の子どもが見れば一歩二歩下がると言わず問答無用に回れ右をしそうな猛々しさだ。けれど、人の心に聡いあの子なら、意外にも踏み止まり何が哀しいのかと聞いたかもしれない。
「ほお。何を持って我がマクルトに戦を仕掛けるか。その大義とやらを聞いてみたいものだな」
つ、と。細めた眼差しが憤りを滴り落とす。子どもが願い、生み落した平和を別の赤毛が戻った半年で反故にする。その恥知らずぶりに嫌悪が体中を巡る。
ピオニーとて国統べる王だ。情より優先される国益、私を捨てる公を知っている。その選択を選んできた。失いながら、選んできた。
だが、違うのだ。これは違う。
キムラスカとマクルトは争ってはならない。戦うことは最早許されないのだ。人間を超越した存在の慈悲によって命をつないだ人間という種は。
手を携え、生き合うからこそ、人間は人間が強いた犠牲の赦されざる罪を許されたのだ。見逃してもらえたのだ。
それを望んでくれたから。
だというのに。
そうであったというのに。
よりにもよって、それを最も理解しているべき国のその片割れの人間が戦争を起こすとは!
だんッ
消化しきれなかった怒りに、力任せに殴りつければ嫌な音を玉座の一部が立てた様な気がしたが、ピオニーは痛みすら感じ取れない。
一度息を止め、深く深く息を吐いた。そして意識を切り替える。ピオニーは王だ。いつまでも感情的であることはできない。許されない。今は。
「それで、状況はどうなっている」
静まり返った謁見の間でピオニーの声だけが響く。針の落ちる音ですら聞こえそうななか淡々としたゼーゼマンの声が王に応えた。
「はい。今はセントビナー駐屯軍が睨みを利かせておりますが、膠着状態はそう保たないとマクガヴァン将軍より報告が上がっております。つきましてはキムラスカが兵器を投入される迄に援軍を、との要請がございます」
“投入される兵器”その言い回しに静まった空間がざわめいた。その兵器こそがこの宣戦布告の根だ。ざわめきは嫌悪を乗せていたが、それは兵器と人間が表現されたことにではない。その人間がマクルトにとっての、否、この星の救い主を殺し、貶めたからだ。
マクルトの民が親しみ、慈しんだ哀しくもやさしい子どもの殺戮者だからだ。平和を望んだ子どもの願いさえも砕く者だからだ。罪深さを理解せぬ痴れ者だからだ。
「キムラスカが兵器を投入するなら、我がマクルトも相応にすべきと思うが?」
水の都を治める王が宣下する。
「ジェイド・カーティスと第三師団、サフィール・ワイヨン・ネイスに出撃を命ずる」
憎い。切り替えたはずの感情が囁いた。
胆の底から響く声を喉もとでとどめ、王は命を紡ぐ。
「ジェイド・カーティスを大佐位に復職。併せて第三師団を率いらせろ。サフィール・ワイヨン・ネイスに特別小隊を与える。先の罪業を返上させろ。それが償いだと。
グレン・マクガヴァンは第三師団合流後セントビナーの哨戒を強め、流れた兵や別働隊の捕縛を」
居並ぶ臣下を睥睨し、鷹揚である王の元来苛烈な意思が下る。
「キムラスカの民を蹂躙はするな。だが、刃向かう者は殲滅しろ」
臣下は一斉に最敬礼で応え、王は生まれる穢土を見据えた。
Fin
ピオニー版。この話が時間軸では一番最初です。
キムラスカから宣戦布告文が送られて陛下ぷちん。ただでさえぐつぐつと煮え滾っていた怒りが溢れちゃったゾ、と。
布告文はそれで大義にはならないというこじつけです。なのでピオニーはキムラスカ王侯の血を根絶やしにします。傍系も落胤も許さんよ。あとダメ貴族どもも。
実はなジェイドとディスト。
ディストの方はディストので少し書きましたが、ジェイドは使者からのありえんアレコレで軍位剥奪でレプリカの研究してました。勿論監視つきです。一応、役に立ってたから罪人一歩手前、みたいになってるだけで罪人なので。本人はそれが当然の認識になってます。旅の最後の方では地殻までマジ凹ませられたので。
ディストは瘴気中和後かそれ前には捕まってたイメージ。で、「あなたたち仲間だったんですよね?一万の赤ん坊を殺して自分たちを助けて死ねって7歳の子どもに何言ってんですか!?障害が発症するまで時間があるんですからもっと研究すればよかったでしょう!!ピオニーあなたも王なんですからこういうときに王の権力使わないでどうするんです!?」ってマジ信じられないみたいに言いました。大事な人と大切な思い出以外わりとどうでもいいディストだけど、近くに苦しんでいるレプリカ(シンク)もいたし、常識度は高かった(自分勝手な研究が好きなだけ)ので、本気で唖然とした。私基本あの世界みんなアホだと思ってるので。
で、この戦争は兵器=超振動投入ってことで問答無用の譜力で復職です。勿論事前に音素減少化の世界でどれくらいの譜力があるかは実験してます。このときのこの二人が人間離れしてたことが発覚。ほら。音素集合体の意識にシンクロしちゃったからね。
両名とも命令を受けて、無表情→怖気立つ笑顔→無表情、で拝命してます。拒絶する権利なんてないけど。
既述の通り絶滅させます。
12/11/03
title by確かに恋だった