きみの為の手で






あなたの愛で強くなる






 “初めまして”から一週間。どきどきしながら待っている。


 カタリ。来訪を知らせる音にぱっと笑顔になったルークが窓を振り返る。
 「シンク!!」
 小さな声で、けれどいっぱいのよろこびに溢れる声で名を呼ぶ。手伝いに駆け寄る前にさっさと中に入っていたシンクへルークは手を伸ばした。その手が躊躇いなくとられて、やさしく握られる。それが譬えようもなくうれしくて、にこにことルークは笑った。
「久しぶりだね、ルーク」
 その手を引いて、まるで自室であるかのように誘導するシンクに従い、並んでベッドに座ったルークが握られたのと逆の手を伸ばした。心得たシンクがその手に顔を近づけ、ルークの手が仮面の結び目を解く。露わになった目のやさしさに、へへと照れたように笑い、膝の上にシンクの仮面を置いた。
「シンクに会えんの、すげー楽しみだった」
 ずっとシンクが手を握ってくれているのをいいことに、ルークもぎゅうと握り返す。嫌がる素振りもまるでなく、笑ってくれるのがうれしい。
 ルークにもシンクが自分より小さいことが分かるのに、シンクはとてもしっかりしている。二度目の邂逅だけれど、シンクがルークの味方だと疑いようもなかった。
 身を寄せて囁くように話せば、変わり映えのしない詰まらない日常も抑えつけられ、見下される勉強も楽しい。碌に説明もしてもらえないわからないことを愚痴れば、シンクは丁寧に教えてくれた。輝くようなわかったに知るのって楽しいと言えば、シンクはやさしく頭を撫でてくれる。
 それもまた、うれしかった。
 短い夜の時間を囁くように楽しんでいたのに、触れてきた気配にシンクは感覚を研ぎ澄ませる。問おうとしたルークを指を立てて黙らせ、足元側にまとめていた上掛けを掴んでルークを押し倒した。
 その際、ルークの膝の上にあった仮面が落ちてしまったが拾う方のリスクの高さに気づかれないことを祈って諦める。
「シ、ンク」
 重なるように隠れるシンクへルークが戸惑う声を投げかけても、「シィ」と寝たふりを指示される。わけがわからないまま目をつむりゆっくり呼吸をしていると、カタン。とシンクの時より大きな音がして肩が震える。怖い、と思うより先にシンクの誘導する呼吸と、上掛けの中で気づかれないほど小さく動いた手に落ち着いた。
 それからどれほどの時間が経ったのか、実際よりもずっとずっと長く感じた。じっと、見られる気配。強い気配。メイドたちが陰で悪く言う時よりずっと冷たい気配。
 シンクが覆ってくれる熱に縋って演じる寝たふりに、それでも意識が悲鳴を上げる頃、漸くカタンと再び音が鳴った。二人分のベッドの中の熱が動き、やさしい手が頭を撫でてくれる。
「もう大丈夫だよ、ルーク。よくがんばったね」
「シン、ク」
 ルークの大きな翡翠の目から涙が零れた。突如強いられた強い緊張。生まれて初めて認識した殺意。一人きりではなく守るようにシンクがいてくれようとも、泣いてしまうのは無理もない。
「金髪の若い男だった。わかる?」
 抱きしめて訊いてくるシンクにルークは頷いた。もう少しだけ、こうして守ってくれれば、きっと怖くなくなる。
「きっとガイだ。よく窓から勝手に入ってくるんだ。何度もヤメロって言ったのに」
 笑って本気にしない。
「昼間もたまにすっげぇ怖い顔してる。ペールは全然そんなことなくて、いつもやさしいし、記憶喪失の俺のこと馬鹿にして、仕方がない奴だな、なんて言わないのに」
 言いながらその理不尽さに怒りよりも落ち込んできたルークがシンクに抱きつき直し、胸に頭をすり寄せる。甘えてくるその仕草に、シンクは軽やかにあまく笑う。
「ルークはちゃんと学ぼうとしてる。気づかない奴らも意味を正しく理解できない奴らも放っておけばいいよ」
 今はひとりでは怖いだろうと、それから勢いよくベッドに押して並んで転がった。
「朝までは居られないけど、一緒に寝よう」
 うれしそうに、ルークは笑った。



 ガイ・セシル。ガイラルディア・ガラン・ガルディオス。
 自称親友の育ての親。実際はエセ親友の使用人モドキ。職務を果たさない護衛で復讐者。教育をしなかった自分を棚に上げて、ルークを庇いも擁護もしないでバカにして、見捨てておいて迎えに来てやったと恩着せがましく言った下衆。
 ルークの側から最も排除すべきで、排除しやすい下郎。
 まずはコレの排除からと決めて、シンクもぬくもりに身を委ねた。





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 あの野郎から排除。お前が親友だなんて認めない。世の親友に土下座して謝れ。
 シンクはアニスから情報を得ていたので、当然の如くさっさと下衆を排除する気でした。最初っから。ルークに運命を感じた瞬間から。なので、腹立たしいけど、いいタイミングで来たなって思ってもいた。ルークを泣かせて許してやる気もないけど。
 シンクとルークは出会った瞬間にビビっとしたもので一気に仲良くなってます。ヴァンの見せかけなんて目じゃない。
 あと、ルークとシンクの初めましてはこの間の確認のじゃないです。ちゃんと起きているルークを訪ねました。夜に。今は夜にだけあえる友人です。




13/06/22
14/07/07




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