ああ、あなた あなた あなた
嗚呼残酷な人 その命が欲しかった
誰よりも兄を信用していた。
誰よりも兄を信頼していた。
何よりも兄をあいしていた。
世界の遠さに眩暈、がした。
慥かに夢見たことのある光景が広がるのにサスケが感じるのは底のない絶望と、無限と広がる虚無だ。
体中についた傷が痛みを訴えているはずなのに、ぬめる血の感触すらわからない。
指先から滴る血のアカと、倒れ伏すひとのアカは同じものでつくられているのに、どうしてこんなにも違うのか。
そろり、とサスケは手を伸ばした。立っていたのに、気がつけば膝をつき、その姿でにじり寄ったのか、僅かに濡れた違和感があった。
閉じられたそのひとの眼は己と同じ紅で、それは同じアカであるべきで。
サスケは襤褸のようになった衣服の胸元を握り締めた。
こんなにも泣きたく、苦しいのに、何故イタチはおだやかに目を閉じているのだろう。口端から零れるアカがなければ、彼の胸を空虚にする穴がなければ、眠っているようでさえ、あるのに。
いや、と。サスケはゆるく首を振った。ぱたた、と遠く近く音がした。
イタチがこうしてサスケの前で眠っていたことはなく、眠っていると思っても、それは彼のやさしい悪戯で。
サスケは胸を掻き毟った。
心臓から指先まで灼かれるように痛かった。痛いのか、熱いのか、苦しいのか。そのどれもが同じだった。
心臓も指先も、灼かれ痛く、苦しかった。
ひぅ。喉が鳴る。
写輪眼の解かれた眼が燃えるように熱かった。熱に焼かれたように、喉が痛かった。
「にい、さ…」
痛みは何もはっきりとはせず、不様に掠れる声が不思議だった。
イタチの姿を歪める何かが不快だった。
「にいさん」
血塗られた指を白い指を、白い貌に伸ばす。触れた温度は兄のそれではなく、灼かれる痛みにサスケは弾かれるように手を引いた。
イタチの目元にアカが伸びる。
嗚呼、と。
嗚呼、と。
サスケは頽れた。熱い眼球も、焼かれた喉も、理由は同じだった。体中の傷が痛まないのすら。
嗚呼
サスケは慨嘆した。毀れた泪がイタチのアカを流した。
あ い し て い る の に 。
何を守ってイタチが逝ったのか。最期の最後まで、
誰を守って逝ったのか。守られたサスケは知っていた。
嗚呼なんて残酷な人
せめてその言葉、
この命が在る内に
云って欲しかった
Fin
原作は軽く無視の方向で。
イタチの死を以って、すべてを覚ってしまったサスケの話。
今更ですし、私このあたりはリアルタイムで立ち読みしてたので、氏のそれには非常にトキメキを頂戴したのですが、それはそれ。一粒で何度もオイシイのがこの種族の最大の特徴です。
何の描写もないのでアレですが、これは別にサスケが殺したのではないです。だって、イタチがサスケを好きなら、サスケもイタチを好きすぎる。この兄弟に戦うことはできても殺すことは絶対にできないよ。
このふたりをブラコンで済ますことはできません。想い過ぎて重過ぎる。
イメージはサスケの攻撃から身を挺して守ったのか、自分への攻撃で避ければサスケに当たり、弾くのには遅かったのか。前者なら他の里だし、後者なら木の葉です。後者のが今後の展開が面白いけど。
うちは滅亡の理由は木の葉への謀反とかはどうでもいいので、イタサス好き的にオイシク一族がサスケの命を脅かすような何かをしようとしたとかでどうだろう?
2009/05/01
2009/05/19
By Swallow Sparrow