君をこの手に






君をこの手に






「きみさえいれば後は何も要らない」
 きみはどう思う?やわらかな笑いかけ問う異母兄に、ルルーシュは溜息交じりに答える。
「心配します」
 書籍に落としていた目を上げ、最愛の異母兄をまっすぐに見つめる。誰よりもこの帝室を憎みながら誰よりも色濃く帝室を継いだ紫電の眸には本に対する未練はなく、何気ないふりで心の奥底に沈めた恐れを口にした男を見据える。
「心配、しますよ。シュナイゼル異母兄上」
 貴方の強さも弱さも、欠陥も。俺が最も把握してると自負しています。
「異母兄上。俺はもう、何処にも行きません。帝国ここにあってももう大丈夫だと思えるから」
 だから心配要りませんよ、とルルーシュは云った。だから心配しますよ、とルルーシュは云う。それを同じく知っているはずのシュナイゼルがそんな弱音を吐く、ということに。
 シュナイゼルは少し困惑したように笑みを刻み、軽く目を伏せた。これが帝国屈指の辣腕の宰相かと思うその姿さえ、ルルーシュから見れば当然だ。
 自分たちは一度奪われた、絶対的な力で。強引に。逆らう一手を紡ぐ間もなく。自分は失い、シュナイゼルは奪われ続けた。自分は絶望したけれど、シュナイゼルはそれすら許されなかった。
 取り戻した今、シュナイゼルにはその瞬間とその間の絶望がある。時の癒しも忘却も変容もできなかった。生々しい感情がある。
 きみだけで、いい
 まもれなかった
 守れずに奪われて、奪われて失った。死んだと聞かされたにも拘らず、平然としていられた自分がおぞましいとシュナイゼルは思う。この国やこの身を天秤にかけるまでもなく、大切であったのに。
「知っています」
 知っていますよとルルーシュは云う。ルルーシュがそれを知っていると知っているのに、それを云うシュナイゼルを、だからルルーシュは心配する。
 あえて云わずにおれない彼を心配する。同時に、どうしようもなく愛しいと思う。
 思えば、自然と笑みが広がる。愛しいという想いのまま、向かいの一人掛けのソファに座すシュナイゼルに近づき、彼の腕の中にルルーシュは強引におさまった。
「ル、」
 膝にのりあげて抱きしめて、口吻ける。こんなときは、己の体躯が細身でよかったと心底思う。筋のつきにくい体は体重も軽い。
「ルルーシュ」
 抱き返す力が強い立派な成人であるシュナイゼルが加減を忘れて抱けば、骨格がまだ完成していないルルーシュにとっては、痛いし、苦しい。でも、それがいいと思った。
 ルルーシュは絶望して、憎悪した。憎しみと心を添わせてきた。日本に捨てられたのは仕方がなかったとはいえ、その後のシュナイゼルから何の接触がないことに絶望した。母が死に、妹が障害を負い、皇帝あのおとこに存在を否定され、絶望した。死んでしまいたかった。必要とされないなら、シュナイゼルに必要とされないなら、死にたかった。なのに、死なせてさえもらえなかった。死ぬほど絶望したのに、シュナイゼルを慕う心が死を邪魔をした。それなら仮初にでも憎むしかなかった。憎しみに転化して、思うしかなかった。この8年間何度この唇が紡いだか知れない、愛してると同じだけの憎しみを。
「異母兄上」
 うっとりとルルーシュは呼んだ。骨が軋むほどの包容に、陶酔した。シュナイゼルの腕の中に耽溺した。
「ルルーシュ」
「ルルーシュ、ルル。ルルーシュ。ルルーシュ」
 手を頬に添えれば、甘くとけた紫電がシュナイゼルを見つめ、形の良い桜色のくちびるがちいさくわらう。
 あいしてる
 お前を愛してるよ





                          Fin
 よわっちい異母兄上。
 ルルーシュが若干病んでますが、スルーで。アレです。ナナリーへの溺愛はシュナに多分に流れてます。
 この話ではナナリーは死んでるか、隔離されているけど、ルルーシュはシュナさえいれば満たされてます。8年分だしね。
 それにしてもこのシュナはどうしたんでしょう。もっと真っ黒のシュナの予定だったのに。何、この真っ白っぷリ。
 というのも、シュナイゼルはシャルルのギアスにかかってました。
 R2の19話派生でジュレミアのキャンセラーしてたらの話。記憶が戻って、周囲がルルーシュに銃を構えていて、愕然として慌てて弁舌を駆使しました。うん。ルルーシュに白いだけでこの人の本質は大丈夫、真黒です。
 この話には出てないけれど、ロイドがルルの騎士です。たぶん、10年越しくらい。
 今はイチゴタルトかプリンを作ってます。ルルーシュの好きなデザートは任せとけ、自分も大好き!そのうちメインも作るようになります。
 とりあえず、この3人は常にセットです。ロイルルならいい異母兄シュナ様。シュナルルなら騎士ロイド。いえ、ロイルルでも騎士ロイドです。ロイド騎士はデフォです。