跳ねる水音






 戯言を。
 そう一笑に付した新王に月渓は叩頭して真情を訴えるしかない。
「私は先王を弑逆するという大逆を犯した身です。主上がお起ちになられたにも拘らず、どうしてこの身を鷹隼宮におくことができましょう。
 一刻も早く仙籍を返上し、罪を償わねばなりません」
「だが、そなたが仮王として傾国を止めていたのだろう?国が新しく生まれ変わろうというときにそのような有能な官を手放してはやれんぞ」
 玉座にて優雅に足を組みかえた王は若干呆れたようなやさしげな声で引き留める。
「いいえ、かようなことはございません。わたしは先王を弑し、国から天命を奪い、それによって民の命をも奪いました。臣のような不忠者が新しき芳に在るわけには参りません」
 月渓が王の言葉を固辞すれば、紫電のうつくしい眼をやさしくやわらげ、間をおく。
 王にとっては意図したものだが、叩頭し、王の尊顔を仰げぬ月渓にとって、この間はあるいはこれまでの王の不在よりもよほど重いものだった。
「月渓」
 表情が一変し、若く張りのある、これぞ王たれり、と云わんばかりの覇気溢るる声が月渓を呼ぶ。
「先王を弑し、国を荒らし、民を奪った罪を背負うならば、今こそ、そなたは償わなければならぬ!!だがそれは仙籍を返上し、只人たればよいとなどというものなどでは断じてない!それは逃げだ!それこそがそなたの罪だ!!そなたが誠に償うのであればそなたは努め続けなければならぬ!!
 国を荒らしたというならば国に緑を戻せ!民を奪ったのならば民が戻り、新たに生まれてくるように整えよ!先王を弑したならば、今度こそ王に仕え続けよ!!
 それこそがそなたがすべき真の償いだ。その贖いなくして今生と別れようと逃げるな、月渓!!」
 それはまさしくいかづちのようであった。その若く細い体躯のどこにそれほどの力強さがあるのか。同席していた小庸は、不敬と承知しながらも思わずその苛烈な声を見上げていた。
 そのいかづちに打ち据えられ、眼を瞠り、微動だにできぬ月渓に、次いで慈雨が降る。
 至尊についた若き王がゆっくりとその階を下り、いたわりに満ちた手を添えた。
「それにだ、月渓。敬愛する王の変事を止めんとするのは不忠者とはいいはしない。
 この芳をいい国にしよう。緑に満ち、笑顔の溢れる国に。誰もが誰かに手を差し伸べられる、やさしさに満ちた国に。よりよくある明日を信じられる国に。
 月渓、その国を先王仲韃殿に捧げ、しかるのちに、野に下れ。私はそなたの明日を祝福しよう」
 う、と声が漏れた。噛み締めたはずの口の隙間から、唸るような声が零れ出た。
 それは過去に月渓が見た夢だった。仲韃の下で為そうと夢描いた国だった。夢と潰えた夢だった。
 ううと唸るような声が漏れた。ぱたりぱたりと水滴が床を叩いた。
 額を押しつけ、声を殺す。それは叩頭礼では最早なかった。唸るように、声を殺して泣く姿だった。男の、泣く姿だった。
 黒の官服に身を包んだ若き少年王は、その姿を隠すように月渓が落ち着くまで抱いていた。
「月渓」
 王が臣の名を呼ぶ。
「冢宰に任ずる。国の綱紀を改めよ」
「謹んで 拝命賜ります」





その瞬間、彼の世界は光に満ちた





                             Fin
 唐突に十二国記パラレル。好きなんです。
 ルルーシュが月渓に説教かましてる姿が浮かんだので。芳なのは、2,3個しか見たことないギアスが芳だったので、芳なのかなと思いまして。
 桓魋が来て(原作)、立ち直ったって、どうしようもない罪の意識は消えないと思うんです。新王が起ったら尚のことだと思う。仮王だから許されなかったけど一人の人間に戻って死にたい、仲韃を殺した罪は重い。だって、天災起きるもの。民を思って王を弑して、民が死ぬ。苦しかったでしょう。死んで許されたかったと思う。新王が起って、もう責任を果たしたって。
 でも、それを説教できるのがルルーシュです。人の悪を背負って死のうなんて本気で思って行動しちゃうルルしか怒れない。だから芳王なのか。
 ついでに麒麟は決まっていないので普通の麒麟でいい。でも、色彩はシュナ兄上ぴったりなんですよ!ただ、年齢がどうにもならない。




11/06/21
11/09/16