もう失わない、僕とあなた
僕と君の契約更改
無事だったカコがあっても拭えぬ不安に駆けて、怪我のない至尊の姿にロイドは安堵の息をついた。
「ロイドッ」
駆け込んできたロイドの姿に己を守るように小さくなって震えていたルルーシュは、名を呼ぶなり飛び込んだ。いつの間にか膝をついていたロイドは危なげなくルルーシュを抱きしめる。
欠片の躊躇いも疑心もなく、無条件に守られることをルルーシュが信じて飛び込んできてくれたことがロイドは何よりもうれしい。
カコにおいて、ルルーシュはここまで信頼してはくれなかった。信じてくれていた。けれど、頼ってはくれなかった。突如として降ってきた暗に、ルルーシュは決してロイドを巻き込んではくれなかった。それはロイドを大切にしてくれていたからだと知っているけれど。
ロイドが捧げた忠誠をルルーシュは過たずに受け留めていた。だからこそ、だからこそルルーシュはロイドを巻き込む選択をどんな時ですら選んでくれなかった。それがロイドの望みでも、ルルーシュが大切にするものにロイドの未来があればこそ。
けれど、けれど。
今、ルルーシュは躊躇わない。ルルーシュのみを一心に案じたロイドに全幅の信頼を渡す。ロイドの忠誠をやはり過たずに受け入れながらも、騎士たるロイドに剣たれ、盾たれと委ねてくれる。
だからロイドは安堵を得られる。今度こそ、ルルーシュと共に生き、共に死ねる。共に死んでいいといってくれる。ルルーシュにおいて逝かれない。ルルーシュはおいて逝かない。
「ご無事で何よりです。ルルーシュ様」
アリエスは突然として起きた宮の女主人の暗殺という凶事で騒然となっているのに、この主従の仲だけがやわらかな空気に包まれている。先程まで震えていたルルーシュさえ、今はおだやかだ。ついさっきまで隣にあった恐怖はロイドが来て、幕一つ向こうへといった。
守られているのだと、心ごと、心から、守られているとルルーシュは知っている。有能で、誰からも嘱望される男が己を主にと。己の騎士にと願い、律し、努め続けていることを知っている。知っていることに喜んでいることを。
「お前がいてくれるから。平気だ。ロイド」
俺の騎士。
何よりも傍近くにある唯一。家族の愛が離れ、伴侶との仲が冷めても、決して消えない絆。触れ合うことのない。けれど最も深き永遠。
「ええ、ええ。ルルーシュさま。ずっとお傍にいます。ずっとずっと、お傍にいますから」
だから今夜の出来事なんて、みんなみぃんな忘れてしまっていいんですよ。ゆっくり眠ってください。悪い夢からだって、あなたのことを守りぬきますから。
子守唄のように囁かれる言葉と、やさしく包む体温に安堵を得て、10歳の体は休息を欲し出す。
ついさっきまで異常に覚めていた体は既に半分以上眠りの中だ。このまま眠ってしまえばきっとひとりになってしまうとルルーシュはぎゅううとロイドの上着を掴みこむ。
離れてしまわぬよう。離されてしまわぬよう。
「大丈夫です、ルルーシュさま。たとえ死んでしまっても、もう 離れませんから」
だから今度はご一緒させてくださいね。許してください。
夢うつつのロイドの声に、応えるようルルーシュはもっと強く握りこんだ。
「おや。妬けるな」
立場があり、外聞もあり、駆けては来れなかったシュナイゼルは変わらぬ典雅な笑みを浮かべ、ルルーシュを抱くロイドはそんなシュナイゼルを鼻で笑う。
「主と騎士の間に誰も入れるはずがないだろ。羨ましいならキミもキミの騎士を見つけなよ」
恋い慕い、触れ合うことが許されずとも、死ぬまで離れない絆。死んでも解かれない絆。愚かな人間が唯一望めたえいえん。
「さて。残念な知らせだ」
それには何も答えずに事件の処理をカノンに任せたシュナイゼルからの言葉にロイドは目を向ける。
「同じように生きているそうだ」
あの子を理解せず、罵って追い詰めた愚かで醜い子が生きているよ。薄紫の眼を酷薄に眇め、穏やかな声音で知らせる。感情も何も伺わせない伊達に皇室内を生きていない、実に皇族らしいシュナイゼルにロイドは頷いた。けれど、ロイドに焦燥の色はない。
確かにV.V.は押さえ、アーニャの精神にマリアンヌはいない。今世はギアスを発現させる間もなく意識ごと死んだだろう。だが、ルルーシュの献身を当然のように搾り取るナナリーは同じように生きているのだ。ルルーシュを傷つけ殺す人間は生きているのだ。
なのに、何故。
「喜ばしい知らせだよ」
シュナイゼルのそれに対なすよう、ロイドは言った。
「ルルーシュさまはただの一度も名を云わなかった。ただの一度も気を向けなかったよ」
前と違って。僕がいてよかったと、それ以外言わずにこうして安心して眠っておられるよ。
愛しげに頭を撫で、ロイドは笑った。シュナイゼルは一瞬虚を突かれた顔をして、同じように愛しげに満足げに笑った。
Fin
カコと違って、兄弟たちは密に過ごしているので、問題があっても即効です。この後オデュッセウス、ギネヴィア、クロヴィスと続々と集まってきます。カリーヌは時間が時間だし、母后妃が許さず来れませんでした。しかし、事件で大変な現場に来ちゃう皇族たち。まあ、指揮はさっさとカノンを使ってシュナイゼルが執ってるのでいいんですが。
逆行の記憶は本当の一番はロイドなので、あらゆる方面に研鑽を積んでました。ただ、下手に目をつけられても面倒なので、表面的にはカコと同じ「天才だけど…(変人)」ってのを維持。ルルーシュに初めて会った時に「僕、ルルーシュ様の騎士になります!!」とマリアンヌとシュナイゼルの前で公言し、ロイドが騎士になるのか良かった(騎士に足る能力は見せてた)的な発言を引き出し隠すの止めた。騎士的能力は隠さなかったのはシュナイゼルの学友って盾があるから。ある程度の有能さは見せとかないとだし。このロイド物心ついたときには誰かの為に生きるという思いがあって、10歳で逆行の記憶を取り戻してます。
なので、今は私的な騎士ですが、お互い唯一だと思ってます。専任騎士にはルルーシュに地位が必要だけど、そのときには兄弟たちがガン押ししてくれるので無問題です。
今回の話は騎士主間は純粋に強固な主従です。カプ決めてない(というよりルル愛され)ので。ロイルルなら主従の絆でプラトニック。主従にある絆の絶対が前提。
白主従アンチって、「てめぇらのそれは騎士と主じゃねぇよ。恋人だろ。専任騎士を舐めてんのか。公私の別ってものを本気で理解してねえな」というものなので。とはいえ、ルルーシュとロイドなら公私は完璧に分けるだろうけど。
ナナリーをまるっと気にしなかったルルーシュですが、異母兄姉妹がえらく親密になって、入れ替わり立ち替わり会いに来ては大好きだと言われちょっとのことですごくよろこばれたりでルルの中で同母妹はかすみました。
12/11/07