マスカレイド・イフ






道化師の末期






 未来は変えられない?
 変わる…?
 変える。


 絶望の始点。始まりの悪夢。
 けれどそれは幾許かの存在にとっては待ち望んだ開幕のベルだ。
 何よりも愛しい存在から害悪でしかないものを引き剥がし、その天性の資質を伸ばし、才能を開花させる。
 そして、誰でもない、たったひとりの為に彼が願った世界を創る。未来というカコの夢を種にやさしい世界を花開かせる。
 第五妃マリアンヌが暗殺された日というのは、正直なところ優秀と名高いシュナイゼルの意識にもなかった。だが、ルルーシュが謁見し、そして突き落とされた日も、帝国から放り出された日も。抉られるように強く刻み込まれ、憶えている。
 その日付の半月前から密かに厳戒態勢を敷いた。その半年前、つまり記憶を手にした日から不老不死者や愚かな研究の対処法を調べ続けた。不老不死者に関してはどうにもならなかったが、警備に関しては手のものを潜り込ませたし、V.V.はようは出れないように封じて水底かで死と再生を繰り返させればいいと決着をつけた。とりあえず、マッドな悪友へのモルモット提供は決まっている。
 そして、そのマッドな悪友は今シュナイゼルの前で静かに、静かすぎるほど静かにその報せを待っている。


「きちんと把握してるんだろうね?」
 普段の常人離れした雰囲気やニヤニヤ笑いを浮かべずに、硬質な眼差しでひたりとシュナイゼルを見たロイドは挨拶も嫌味も抜きに問うた。
 その眼差しは騎士だった。その心は騎士だった。主を第一とし、主を守る為だけに存在する者。そう、カコにおいてもロイドは表に出ることのない騎士だった。ルルーシュの心がそれ以上踏みにじられ、殺されることのないように、あの悲劇を受け入れざるえなかった騎士だった。
「今度こそ、きみに守るつもりはあるのかい?」
 違うのならば排除しようと不出世の天才の眼が云っていた。
 地位や身分で比べればロイドはシュナイゼルに敵いようがない。だが、純粋にその才能のみで比べるならば、シュナイゼルはロイドに敵わない。得意とする才に関しては方向性が違う分一概には言えないが、それでもルルーシュを輔弼する能力を考えれば十分すぎるほどだろう。況してや、戦闘能力では確実に勝てない。
 今、ロイドを前にして、シュナイゼルは痛感する。カコのルルーシュがどれほど劣悪な環境下で生き抜いてきたのか。守られることのなかったルルーシュの苦しみを想像することすら、本来は難しい。
 そして、守りたかったのに、守る能力も術も奪われたロイドは最愛の主の命をも奪われ、どれほど無力に生きたのだろう。
「守らない理由がないね。あの子は私の光だ。まだ奪われていない、私のすべてだよ」
 もう間違わない。シュナイゼルは誓いをもって宣言することができる。
「あの子だけを守る為に、私たちは生きているんだよ」
 その答えにひとまずの満足を得て、ロイドは頷いた。


 そして、
 今。
「殿下。アリエスより、ルルーシュ様より使いが」
 これに備えて隣室に控えさせていたカノンが若干青褪めた顔で告げる。マリアンヌ妃が暗殺される可能性を知らされていても狼狽せずにはいられないだろう。シュナイゼルの打った手はただルルーシュ一人を守るものだ。
 ちらりとシュナイゼルに視線を投げ、ロイドは腰に剣を佩いて急ぎ足に出ていった。ロイドのすべてを捧げる相手は決まっている。正直、シュナイゼルがロイドの大切なただひとり以外をどう扱おうが興味はなかった。
 運命がまた始まる。
 新たなる始まりには幾人かの望む世界の幕開けとなるように。
 カコにおいて悲劇の序章だった幾許かの死の。
 誰かの喜劇ファルスが始まる。





                    Fin
 ロイドも逆行してます。誰かが逆行してる時はロイドは基本逆行してる。ルルーシュはしてません。
 ロイドの苦しみは、カコ、アリエスの時はロイドの立場を憂慮したルルーシュに禁じられ、ゼロレクの時は生きて世界を見てくれと願われて。ロイドはルルーシュの心を守る為に、ルルーシュの願いを聞き入れるしかなかったこと。
 ついでにこの日を待ってる間、逆行組は誰がルルーシュを引き取るかで揉めてました。結局は一番懐かれてたシュナイゼルが権利を得ました。「お前、カコもそうだった(のに何もしなかった)くせに…!!」と兄姉はギリギリしてます。カリーヌは年齢的に家に主張が通らないし、クロヴィスは即効負ける。
 ロイドはこれを機にずっとルルーシュの側にいます。そういう意味でもシュナイゼルなのは良かった。





12/08/12