絶望からはじまりを






ぼくはきみを見捨てた、のに






 愛し子が。 愛し、愛され、幸福であるように。
 願い望んだ あしたがあるように。



 じっとりと嫌な汗が肌を冷やす。貼りつく寝衣が酷く不快だ。だが、それ以上に信じ難く認め難い、いや、信じたくも認めたくもない“記憶”としか表現しようのないものが脳を焼いた。
 幼子を襲う悲劇の皮を被った喜劇、思い違いも甚だしい愚行、塗重ねられた憎悪、繰り返された裏切り、無知にして積まれた無恥。
 そして。
 まったき悲劇が生んだ悲劇。
 この生まれを得て決して流したことのない涙が流れた。
 守れたはずの守らなかったもの。そう、守らなかったのだ。守れなかったなどという無様な言い訳はできない。そんな資格は持ち得ない。
 だが。だからこそ、今。
 今度こそ、間違えはしまいと誓う。
「ルルーシュ」
 それは、失われた愛の名だった。


 その日、アリエスは類を見ない盛況――というのも変な表現だが――ぶりだった。
 第2皇子のシュナイゼル、第3皇子のクロヴィスはこれまでもおとないを受けたことのある相手だった。度々訪れてはルルーシュと共にすることのある比較的中の良い異母兄たち。だが、今日はそれに第1皇子のオデュッセウスや第1皇女のギネヴィアまでいる。 温厚といわれるオデュッセウスはまだしも、マリアンヌ嫌いのギネヴィアがいるのは応対に当たった使用人を大いに混乱させた。
「今日は異母兄上方もルルーシュに会いたいと仰ってね」
 やさしげな雰囲気のシュナイゼルの言が、けれども真実すべてだったのだ。
 アリエスへ赴く途中で顔を合わせた彼らは他の三人が自分と同じものを見たのだと、その焦燥を孕んだ眼に見た。それが性質の悪い夢でも、何らかの悪意による介入でもないと。そして、願っているものが同じであることも理解して。
 同じ願いを持って頷く。
 望む幸福。望む未来。絶望に殺される愛しい存在が、しあわせだと笑える明日を共に過ごせるように。その為に自分たちが持つものを如何様にも使おうと頷きあった。












「ルルーシュおにいさまぁッ!!」
 たいして仲の良くない異母妹が駆け込んでくるなり泣きだして、ルルーシュはおおいに慌てた。
 何かとナナリーにきつく当たるカリーヌに対する心象はお世辞にもいいものではないが、恐怖と怯えに泣きだしそうだった顔が、ルルーシュを見るなり安心と喜びに変わって泣きだせば、ルルーシュは咄嗟に抱きしめてしまう。
 そうして抱きしめた異母妹はぎゅううと抱きついて、皇族としての振る舞いも幼くとも高い矜持すらも放ってただただルルーシュに抱きついて泣くのだ。うれしい、うれしいと。
 ルルーシュの存在にこそ喜び泣くカリーヌが少しだけ不思議で、それに勝る喜びで抱き留めて、だからルルーシュはやさしく囁いた。
「どうしたんだい、カリーヌ」
 もうぜったいひとりになんて、しないんだから
 喉を詰まらせながらの宣言に、ルルーシュは自分も泣きそうになりながら、うん、と小さく頷いた。
 兄たちが来る、三日前のこと。





                       Fin
 実はカリーヌが一番手だった。逆行上位皇族はオデュッセウス、ギネヴィア、シュナイゼル、クロヴィス、カリーヌ。リ家を除いた上位継承者です。リ家は好きになれないんだ。
 彼らはルルーシュを愛し、かわいがりしながらいつかルルーシュを皇帝にするための勉強とか根回しとかしていきます。カリーヌは甘えたりしながら一緒に勉強する。ルルーシュを頂点に新ブリタニア体制の準備です。
 ナナリーだとかマリアンヌだとかは華麗にアウト・オブ。皆Cの世界でいろいろ見た記憶ごとあるので寧ろさっさと死ねとか思ってる。長兄も素敵に黒くなりました。
 そう言えば、文中の言葉はこう訳します。幼子を襲う悲劇の皮を被った喜劇=マリアンヌの死、思い違いも甚だしい愚行=V.Vの殺人、塗重ねられた憎悪=皇帝の言動、繰り返された裏切り=スザクの無理解、無知にして積まれた無恥=ナナリーの言動。まったき悲劇が生んだ悲劇=ゼロレクイエム。




12/03/21