あげられる、最後のもの
いち、に、さん。それでお終い
ルルーシュは話があると言われ、オデュッセウスに見送り不要と微笑まれた――兄弟水入らず希望と理解した――ミレイはぬるくなったというよりも冷めた紅茶で喉を潤す。なんというか、微かに記憶にあるオデュッセウスの柔和さは夢だったのかと思うような切り捨て方だった。気持ちはよくわかるが。
ぼんやりと思考を巡らせながら、それとは違うところで目まぐるしく考えが働く。ルルーシュの為にできる最善について。それがいつだってミレイの行動基準だ。
淹れなおした紅茶をカップごと交換され、ミレイはありがとうと笑いかける。咲世子が眼差しで礼を返すのを見つめて、彼女を連れていくという決定に二重丸をつける。ルルーシュも信頼しているし、咲世子の重きがルルーシュにおかれているのも見ていればわかる。咲世子にとっても仕えるべきはルルーシュであり、ナナリーはその妹にすぎないのだと。
「ミレイさんは」
ぐすりぐすりと泣く合間に声をかけられ、ミレイは内心で大きく溜息をついた。話しかけたくも、かけられたくもないからこそ視線を向けなかったのだと、言葉を向けないのだと気づかなかったらしい。頭の痛いことだと思いながら、仕方なく促すように言葉をかける。
「ミレイさんも私が悪いと思いますか。私が…」
震える声で涙を湛えた風情は憐れみを誘うかもしれないが、ミレイからしてみれば呆れるほかない。ついさっきまで眦を吊り上げ険をもった様で罵っていたのに変わり身の早いことだ。
「ナナリーちゃんは、私に何を言ってほしいの?」
己を省み、詫びるのでもなく、自分の味方につけようと儚い少女のふりをする。ご立派なことと言えばいいのか、それだけ強かに振る舞えるなら大丈夫と笑ってやればいいのやら。男なら騙されるかもしれないし、ナナリーを知らない人間でも騙せるだろう。
だが、彼女は忘れているのだ。あまりにも早く。あまりにも簡単に。誰に、何を言ったのかを、忘れている。恥知らずなことに。
どれだけアッシュフォードを軽んずれば気が済むのだろう。
「ミレイさん?」
わからない様子のナナリーのあまりの馬鹿らしさに、ミレイは嘲るように口角を上げた。
「そうよ。ミレイさんよ。このアッシュフォードをおじい様から預かるミレイ・アッシュフォードよ。ついさっきあなたに云われた没落したアッシュフォードの跡取り孫娘よ」
ミレイの返しに、ナナリーは小さく声を漏らし動揺を示すように息を飲んだ。その有様が本気でアッシュフォードへの暴言を忘れていたのだと表わしていて、ミレイは今度は隠すことなく大きく溜息をついた。それにナナリーが肩を震わせたが、所詮3分もあれば忘れるのだろう。
ミレイは確かに先程の暴言に対するルルーシュの謝罪を受け入れた。だが、それはあくまでもルルーシュの、だ。仕えるべき主君であり、そんなことを欠片たりとて思っておらず、妹の暴言に本気で怒ったその謝罪を受けたのだ。ルルーシュが気に病むからこそ受けたのだ。
そもそもナナリーはミレイに、つまりはアッシュフォードに対し謝ってすらいない。ならば当然、許すこともない。だいたい、自身は侮辱したままであるのに、その相手へ擁護する言葉を求めるなど傲慢と呼ぶのでもまだ優しい。呆れ果てるその態度は片腹痛いにもほどがある。
「ねぇ、ナナリーちゃん。ナナリーちゃんは私があなたは悪くないとでもいうと思うの?このエリア11に来てからのルルーシュ様に最も近く寄り添ってきた私が。ルルーシュ様が負われた苦労の、一部でも知ることを許された私が。ルルーシュ様の幸福を願う私が。ルルーシュ様にお仕えすることを誉とするこの私が。
ナナリーちゃんは悪くないのよ、なんて肯定するはずがないでしょう」
くすり、とミレイは笑う。そして歌うように続けた。
「私たちアッシュフォードはルルーシュ様の為にあるの。少しでも苦労を供にさせて戴けるように、少しでも心安らかでいて戴けるように。少しでも楽しんで戴けるように。
すべてはルルーシュ様の為に。アッシュフォードの忠義も命も、ルルーシュ様唯お一人の為のものよ」
アッシュフォードへの侮言など、本当はどうでもいい。どうでもいい相手に何を言われたところで気にする必要などない。我儘な子どもの癇癪など気に留める価値もない。それがアッシュフォードに対するのならば、だ。
ナナリーは怒りを買ったのだ。アッシュフォードの。守護者の。
だから、許されようはずもない。
ミレイは立ち上がって礼を取る。扉の向こうで聞いてしまっていただろう、唯一の主に。
「お戻りなさいませ。ルルーシュ様」
Fin
その後のミレイvsナナリー。ミレイ圧勝。寧ろ負ける要素がない。
ナナリーは絶対他人への配慮ができない。他人というか自分以外の。自分以外の感情に重きを置いていない。で、自分は目が見えないからできなかったりわからなかったりしても当然だと思ってる。見える見えないの問題じゃない。
私の嫌悪はナナリーと黒の騎士団がぶっちぎりでトップです。次点でスザク。で、これらは他の嫌いキャラの超えられない壁的な。捏造設定でも鼻で笑うレベル。ルルーシュ至上主義の黒ナナとかだったらよかったよね、とか思うけど。ない。ないなって思う。
とあるサイト様で10年後のナナリー政権(これがまずない)にルーベン翁が武力抗争を起こして罪を突きつける忠義のSSがあるんですが、私のアッシュフォードはこのイメージ。このサイトは藤ルルメインだからその手は読めないけど。
13/02/08