おはよう、世界
泣き事を聴いてください(たったひとつの弱みを)
「ルルーシュ!」
謁見の間からできるだけ足早に遠ざかり、次いで足音を立てないぎりぎりの速さで駆ける。
目指すのは、先ほど致命的なほどに傷つけられた異母弟の元だ。数多ある異母弟妹のなか、殊の外愛しい異母弟。
「異母兄様」
惨劇の宮の手前で捉まえることの叶ったルルーシュの傷つけられても尚美しく輝くアメジストにやわらかく微笑みかけて、強く抱きしめる。その傷つけられ、壊されかけた心を少しでも癒すよう、癒せるように。
「ルルーシュ」
慈しむようにキスを送る。頭頂部に、額に、蟀谷に、頬に、鼻の頭に、瞼に、涙を吸うように目尻に。
「にいさま。オデュッセウスにいさま」
ルルーシュは心と体を支えていた糸が切れたかのように、やさしい長兄に縋りついた。稚く、細い腕をその背にまわし、小さな嗚咽を肩を震わせて泣く。
母の死に絶望した。妹の様がショックだった。父王の態度に悲憤して、その言葉に抉られた。待ち構えられた死に突き落とされた。
敗けるとわかっている国に行くのは怖い。国民感情が容易に想像がつく分、慄しい。
彼の国はルルーシュを傷つけるだろう。殺さんと欲することだろう。預けられる家が理性的であることを、外交の意味を知るよう、こうなっては今のオデュッセウスには願うしかできない。
「ルルーシュ。私の愛しいルルーシュ」
だからこそ、オデュッセウスはやさしく抱きしめて、名を呼ぶしかない。
「ルルーシュ。すまない。力ない兄で、すまない」
お前を助けられずに、すまない。だが、愛しているよ。他の誰が何と言おうと、たとえ誰がお前を否定しようとも。お前が誰も信じられなくても。
「役に立たない私を許さずにいておくれ。私を忘れないでくれ。ルルーシュ。必ず、お前を助けに行くから。
そして、ルルーシュ。私のルルーシュ。忘れないでおくれ。私のルルーシュ。私はお前を愛しているから。愛していると忘れないでくれ。いとしいルルーシュ」
強く抱きしめ、心の奥底まで浸透するように何度も繰り返す。愛していると。お前は愛されていると。
「信じています。にいさま」
ぎゅうと強く抱き返す、力強さを決して忘れることはあるまいとオデュッセウスは思う。この力はルルーシュの想いだ。ルルーシュがそれでも、今でもオデュッセウスへと向ける想いだ。
兄弟は暫く無言で抱き合っていた。
人の気配のざわめきに気付き、オデュッセウスは断腸の思いで抱く力を緩めれば、応じるようにルルーシュもゆっくりと体を離す。
「あいしているよ」
必ず迎えに行く。待っていてほしい。その想いのすべてをただ一言に籠め、オデュッセウスは囁く。
落ち着きを取り戻した見つめるアメジストが頷いた。
「はい。異母兄上。僕もあいしています」
返したルルーシュが背を向け歩き出せば、それまで直立して控えていた衛兵が頭を垂れてその小さな背に従った。
ルルーシュが帝国を離れるまでの最後の衛兵が彼に好意的であろうことがせめてもの慰めだった。
「力が欲しいな」
零れ落ちた声だった。
凡庸と称されていた第一皇子の呪うような声だった。
Fin
力が欲しいとか言うとARMS@小学館を思い出さずにはいられない。オデュにーにの欲しい力は物理じゃなくて権力だけど。物理は騎士だしね。
という話はさておき、最強オデュにーにによるルルーシュ救済プロローグ。
この話ではオデュにーには凡庸に見せかけていた人。じゃないと弱肉強食で継承権一位は無理だと思う。兄弟間の争いよしきたな風潮になってるんだし。まあ、第一皇子で母后妃や後見はそりゃ強大だろうけど。なんせ、普通ならそのまま皇帝になるし。でも、帝国No.2になったシュナがいるし。本当なら相当強かに立ち回らないとダメなはず。本編準拠なら、No.1自体にあまり興味のないシュナとオデュにーにの毒にも薬にもならない性格が物を言ったんだろうけど。暗殺系はそれこそ周りが守っただろうし。
あと、この話の「あいしてる」はあくまで親愛です。将来的にはわからないけど。
帝国は過剰な愛情表現っぽいし、外国の人のあいしてるってふつーっぽいし。映画とかみると結構普通にLoved youとか言ってますよね。字幕2度見するくらい私は驚いたけど。そのシーンでその直訳的なのでいいの!?いいの!??みたいな。なので親愛です。
11/09/21