貴方の夢を見ていた






その不器用さが愛しい






 こんなことを言っては責任の押しつけのようだけれど。
「私が停滞した今日を望んだのは君がいなくなったからだよ。
 過ぎ去った昨日を夢見ることはできず、だからといって未だ来ぬ明日がいいものだと信じられず、今日で止まればよいと思った。
 君が生きている可能性を信じられる、今日が続けばと」
 そう言ってシュナイゼルは苦く笑う。
 終わった過去に耽溺することはシュナイゼルの矜持が許さず、望みが叶う可能性を知るほどには大人で、最悪ではない今を望むほどには子どもだった。
 最悪でないのならばルルーシュは生きていると狡猾に意味をすり替えて信じた。すり替えたのに、その年月が長くて、願いの本質を見失った。
 愚かだ。どうしようもなく、愚かなことだと思う。失いたくなかったものを己の手で失わせるところだった。それでいいのだと思っていた。
「馬鹿ですね。貴方も」
 シュナイゼルにルルーシュは小さく返して笑う。その笑みはシュナイゼルのそれよりは苦味のない、やさしさと愛しさをブレンドした困ったような顔だった。
 シュナイゼルを蝕んだ虚無が本人が思うより早く侵蝕したのだろうとルルーシュにはわかった。
 幼い頃、仲良くしてくれていた時にも、その兆候は確かにあった。ルルーシュは8年前にはそのことを知っていたし、己がシュナイゼルの虚無を逆に喰らえる者だと自覚していた。
 ルルーシュはそう、だからこそ、戦後シュナイゼルが迎えに来てくれるのではないかと思っていた。願っていた。シュナイゼルの執着が他には殆ど向いていないからこそ、それを疑いなく思っていた。
 けれどその手がなかったのは、ブリタニアかはたまた日本かがシュナイゼルの手を悉くはじいたのだろう。触れられないルルーシュの影が、或いはシュナイゼルを尚のこと追い詰めたのかもしれないと、今更ながらにお互い霧の晴れた心で向き合う。
「ルルーシュ」
 願うように己を呼ばう男にルルーシュは笑う。
 悲劇は確かにあった。両親の真実を知った今となっては、ルルーシュにとっての本当の意味での悲劇はシュナイゼルと離されたことしかない。そのまま8年もの歳月を経ねばならなかったことしかない。
 母の死は当人らの自業自得の末で。ユーフェミアは引き金はルルーシュでも止めを差したのがブリタニアであることはわかっている。彼女を甘やかし、掣肘できなかったコーネリア、騎士の本質を理解せず全うしなかったスザク、治療を施さなかった国。そして、ブリタニアという国をその国是に逆らうことの意味を理解していなかった皇族としての教育を受け止めていなかったユーフェミア。
 確かに愛していた異母妹。愛してくれていた異母妹。願えるなら、叶うなら、優しかった日々のように彼女もいてくれればよかったと思う。後悔はある。
 けれど、それは、もう終わった話なのだ。
「俺が明日が欲しかったのは」
 過去はやさしかった。それ以上に厳しかった。今日は不安ばかりで、荷は重たかった。
「貴方といたいと思ったからです」
 誰かに助けてほしかった。抱きしめてほしかった。大丈夫だと言ってほしかった。守ってほしかった。
 誰かに。誰かに。安心できる誰か。その誰かがシュナイゼルであればと思った。シュナイゼルがいいと願っていた。
「シュナイゼル異母兄上なら、きっと俺を守ってくれると思っていました。きっと愛してくれていると」
 俺の思い違いですかと云うルルーシュは答えを知っている。知っているからこうして笑っていられる。シュナイゼルを前にして、穏やかに笑むことができる。
 憎しみと愛情は同一だ。
 ルルーシュは笑う。シュナイゼルも僅かに驚きを覗かせた後、やさしく笑う。
「君を愛している。支え、守り。でもなにより、愛しているよ」





                       Fin
 間が空いてわからなくなったけど、冒頭の異母兄様の台詞の為の話だからいいのかな。あのひと、何でそもそも今日で留めることにしたんだろうって。そんな話。
 設定としては19話IFだと思う。黒の騎士団が勝手に殺そうとしてルルはロロが逃がしました。皇帝のギアスもあったのかも。目の前で殺されかけ、正気に返ったかな。アヴァロンに慌てて戻って、ルルを殺そうとするのを片っ端から沈黙(永遠に)させてプライベートラインで愛を叫んだと。なのでロロは非常に危なかったけど、生きてます。




13/05/09