救うことができなかった日の話
救うことができなかった日の話
本当は教えたくないんだけど。
そんな前おきでもって、シュナイゼルの十数年来の悪友は3度目の世界が変わることを教えた。
シュナイゼルにとって、既に珍しくもなんともない異母弟の誕生に思うことは何もない。唯一他の異母弟たちと違うの母后妃への感情の煽りで生まれながらに他の皇族たちの蔑みの対象になるという点くらいだ。
だが、そんなことはシュナイゼルにとって何らかの影響を与えるものではない。シュナイゼルはただ望まれたように優秀で優しい異母兄皇子として母子に接するだけだ。
つまらない世界の、つまらない仕事が一つ増えただけ。それがシュナイゼルの感想だった。
まだ稚くも愛らしい異母弟と出会う前の、当たり前の日常だった。
幼い変革者がシュナイゼルの世界を色鮮やかでうつくしいものだと教える前のことであった。
2度目の変革は絶望と喪失を。世界のうつくしさを謳った紫の眸や、喜びを教えた笑顔が失われ、シュナイゼルの世界は前よりも一層酷い空虚に満ちた。
シュナイゼルが本国を離れている間に一連のすべてが片付いていた。第5皇妃の死もその子どもたちの変遷も。すべてが皇帝の名の下に決し、終わってしまっていた。
近くにあれば必ずや守ったのに、その憤りも悔しさもすぐに空漠に変わった。
会えなかった。
急速に黒く塗り変えられていくセカイのなかでうすぼんやりとシュナイゼルは思考した。
ただ一瞬でも、眼差しを交わすことができれば、全力でお前を守ると、そう伝えることもできたのに。皇帝は余程あの幼い子どもを日本においておきたいのか、これまでエリアの制定にと外に出されていたシュナイゼルを国内に押し留めた。帝国宰相、それがその肩書だ。
いくらシュナイゼルとて、皇帝の目が届く本国にあっては日本まで手が出せない。そも、専制君主国家のブリタニアでは皇帝は絶対の存在なのだ。その決定に逆らうことは何人たりとも許されはしない。
そして、手を拱いているうちに凶報は届けられた。
ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアの死。
その一言以外、シュナイゼルの記憶にはない。恐らくは常の通り卒なくこなしたのだろうと周囲の様子から察するのみだ。
ひたひた、ひたひたと。
僅かずつ、そして急速に広がっていた虚無に心を喰わせて、シュナイゼルはお望み通りの第2皇子として笑った。
たったひとり、嘆いて嘆いて荒れて、捨てた。長き悪友を例外に据え、空虚に世界がなくなればいいのにと呟いた。
そして3度目、世界は再びうつくしく、生まれ変わると知る。