お前の幸せが俺の幸せだって、笑ってやる






二人が生み出す相乗効果






 これが運命などと軽々しく言うつもりはない。
 そもそも運命なんていうものをリヴァルは信じていない。
 だというのに、その眼と対峙した瞬間、これが運命だと思った。
 この苛烈さを隠した眼と生きていこうとリヴァルは決めた。
「よろしくな、ランペルージ。俺はリヴァル・カルデモント」
 すべてを明け渡すように右手を差し出し、にっとリヴァルは笑った。
「ルルーシュでいい」
 そう言い、ルルーシュはリヴァルの手を取った。ルルーシュからすれば握手に応じただけだろう。だが、リヴァルはこの時をもってルルーシュの為のものだと契約は成ったのだ。
 13の春 だった。


 授業も終わり、後は帰るだけとなったところでリヴァルは少しばかり席の離れたルルーシュを振り返る。すると、特に打ち合わせてないにも拘らず、目が合う。
 ひょいひょいと手を動かす仕草をすれば、ルルーシュの眼がゆっくりと細まった。悪い笑顔だなとリヴァルは思う。支配する人間の顔だ。だが、それがたまらなくルルーシュに似合った。
 カバンを持ってドアに向かえば、ちょうど同じタイミングでふたりは揃う。近い位置のアメジストとにやりと笑い合い、並んで出た。
 一歩下がるのは今ではなかった。



 13の 出逢いの春に運命と決め、15の 別れの春に運命を手に入れた。



 片膝をつき、頭を垂れ、畏まって待つ。
 制服では格好がつかないと思いつつ、このほうがらしいかもしれないと思い直した。
 前方の唖然とした気配に、ここまで無防備なルルーシュは初めてだとリヴァルは何となく嬉しくなった。
「何やって」
 何とか絞り出したようなルルーシュの声にリヴァルはその姿勢を崩さずに眼差しだけを向ける。
 リヴァルが見つけた彼の運命だ。
「すべてを理解して申しあげる。共に歩む近侍に我が名をお加えください」
 真摯に。心を込めて。
「忘れられることを望んだ方よ。それでも私にお傍に侍ることをお許しください。望む貴方が進む道に誰よりも近く、共に歩むことをお許しください」
 口を開け、閉じ。ルルーシュはリヴァルと小さく呼んだ。揺れる目は驚愕か、恐怖か。
 馬鹿だな。と思う。俺がお前を傷つけるはずないのに。そんな知り尽くした当たり前を忘れるほとに苛まれ続けるルルーシュがリヴァルは大切なのだ。
「あなたは友と呼ぶ日常を手放し、諦めてしまう方だから。友と呼ぶ私をお連れください。私に貴方に跪き、貴方の修羅の道を為し、俺と日常に帰って笑い合う日々を。
 許してくれよ。ルルーシュ」
 ぐっとルルーシュを見上げ、けれどどこか情けなく、折角整えてみた慣れない体裁を忘れ、眉尻を下げてリヴァルは笑った。
「リヴァル。お前…」
 何か言いかけたルルーシュを遮るようにリヴァルは続ける。誤魔化されたくなどなかったし、これから先は畏まった言葉ではなく、これまでルルーシュの生身を見てきたと自負する悪友たるリヴァルの言葉だ。
「ルルーシュ。お前は望んでいいんだ。お前の幸せとか、お前の楽しみとか。お前だけのものを望んでいいんだ。いいんだ。だって、だって。お前、生きてんだぞ?お前が幸せになる為に生きてんだぞ。その為にがんばるんだ。そうやってみんな自分が幸せになる為にがんばってんだ。
 俺はお前が幸せだって、10年も20年も言えばいいって思う。それを聞いてやろうと思う。ばか騒ぎもして、お前が何かやる隣で俺も何かしてやろうって思うよ」
 なぁ。お前が幸せにならないんで、どうするんだよ。ルルーシュ
 ルルーシュの未来に自分の未来を添わせた。ルルーシュの幸せに自分の幸せがある。ルルーシュと出逢って、リヴァルは自分を知ったのだ。どこか生き急ぐような友に。自分を顧みず、ただ不自由な妹の為だけに生きているような友に。リヴァルはルルーシュ自身の為に生きてほしいと思う。
 その為に行うことが大逆でも、祖国への反逆者として名を連ねようとも、リヴァルは喜んでついていこうと決めている。そうでもしなければ生きていけない枷を持つルルーシュがルルーシュとして生きていける未来があるならば、そんなことは全く大したことではないのだ。
「馬鹿だな。お前」
 ぐっと、くちびるを引き結んでルルーシュは言った。
「そんなに聡いくせに」
「何で、益もない困難なほうへ行こうとしてるんだ」
「いいことなんて何もないのに」
「ばかだろ」
 泣きそうだ、とルルーシュは思った。それは自分か、それとも今だ跪いた友か。ああ、泣きそうだと思った。
 ルルーシュの幸せを願ってくれるのは、本気で考えてくれるのは、いつだって血のつながらない、誰かだ。
「リヴァル」
 名前を呼べば、涙が落ちた。
 泣きたいのだと認めた。うれしくて、うれしくて。そうして、ルルーシュは漸く自分の為に泣いた。



「どうした?」
 サイドカーに座った自分の運命へリヴァルはゆるむ頬のまま応えた。
「や?ルルーシュの泣き顔思い出してた」
 あの瞬間こそ、真実リヴァルがルルーシュに触れられたときだ。ルルーシュの、妹にさえ許していない内側へと招かれたときだ。ルルーシュのすべての為にリヴァルが生きることが許されたときだ。
「なッ」
 羞恥で赤くなったルルーシュが、反撃を求めて口を開く。
「地獄の果てまで引きずり回してやるからな」
 だが、その言葉こそリヴァルの求めるものだ。寧ろ本懐に許可が下りただけだ。だから勿論だと、快活に笑う。
「死んだってついていくさ」
 運命を掴んでリヴァルはアクセルをかけた。





                       Fin
 リヴァルがスザクより先に確固たる位置を占めていたらルルーシュを支えられたよ。あんなのいらん。
 からはじまったリヴァル騎士設定。ちゃんとリヴァルは騎士です。叙任式とかないけど。13歳(中等部)で出会い、15歳(中等部卒業)で騎士になりました。これなら最初の友人がスザクでもリヴァルのほうがルルに近いので、諸共大丈夫。第一段階としてリヴァルがスザクに接触させないと思う許容されても一度きり。ルルもリヴァルの言うこと優先。このリヴァルはルルに内緒でいろいろと技能身につけてるのでゼロの時も常に側にいます。
 うちのルルはよく泣きます。人のやさしさに弱い子です。というか、原作のルルはそこまで心に触れてくれる人がいないし、いても遅かったり(ロロ、ゼロレク組)、ルルが守ろうと離れちゃう(生徒会)ので、うちのルルにはそんな人ばっかりにしていっぱい泣かせてやりたい。
 泣いていいと許してくれる相手がいるといいのに。




11/12/16