守るべきものについて






守るべきものについて






 喜びも過ぎれば己の意識下から行動を奪うのだと初めて知った。
 期待も過ぎれば、感じるのは恐怖だと初めて知った。
 名前を呼ぼうとして呼べず、シュナイゼルは無言で抱きしめた。
 警戒や怯えにも似た影を紫電に潜ませた最愛の異母弟を、シュナイゼルは無言で抱きしめた。
 幻と消えてしまうのではないかと恐れながら、7年間、世界を絶望と虚無に造り替えたシュナイゼルの希望を無言で抱きしめた。
 あたたかかった。
 失われなかった。
 消えなかった。
「―――――ッ」
 呼ぶ。
 ぴくりと痩身が反応した。
 涙の気配がわかった。
 何度も何度も。幾度となく、その失われた名を呼んだ。呼ぶ度に腕の力が籠った。
「あ、にうえッ」
 そろりと動いた腕が背に強くしがみつく。つよくつよく肉さえも抉るように、縋る力でしがみつく。幼い子どものように力いっぱい手加減を忘れたようにルルーシュはしがみついた。
 あの日、あの時、そうしたかったように。
 絶対の庇護者に縋って泣きたかったのだ。
「すまない。すまない。ルルーシュ。
 ルルーシュ、ルル、ルル。守ってやれなくてすまなかった。間に合わずに苦しめた。ルル、すまない。ルルーシュ」
 抱きしめて、抱き込んで、シュナイゼルは詫びを繰り返した。鎖骨に近いシャツがじわりとあたたかく濡れる感触に、より、絞り出すような声になる。
 本当なら7年前にこうしていたはずだった。傷ついた心をこうして抱きしめ、守り、安らぎと共に守るはずだった。
 すべて奪われ、失った。あの日に。
「ルル。ルルーシュ。もう大丈夫だ。私がいる。私が守るよ。もう誰にもお前は怯えなくていい。お前だけが苦しまなくていい。お前がすべてを背負う必要はない。
 私がいる。私がいるよ。ルルーシュ。ルル。ルル」
 嘘ではないと、幻ではないと何度も名を呼んで。返ってくる反応に安心して。そして、漸くシュナイゼルは腕の力を弱めた。顔を覗き込むように寄せれば、ルルーシュの目尻がほんのりとあかい。
 目を合わせて、額を合わせ、シュナイゼルはゆっくりと瞬きをして微笑んだ。
「ずっと側にいるよ」
 だからもう泣いていいんだよ、と微笑んだ。





                          Fin
 4話目は異母兄様のターン。そして、こんなだけど兄弟愛だと言い張る。ブリタニア帝室は見たところ兄弟愛がいき過ぎるようなので。ブランク長いし、別れが別れだったので。
 なので4話ではロイドが空気。ちゃんといる。騎士だし。この二人はこんなものだと知っているので邪魔しない。つもりなら会わせない。




11/06/15
12/01/30