これは何より深い愛情故に。貴方の望みを聞き、望みを聞かず、望むままに。






この、花のように
儚い、と、思ったままに言ったら
ひどく怒っていた。
違う、と。
一日、二日で枯れ朽ちる弱いものと同じにするなと。
その姿が、その前を見つめ続ける姿勢が可愛いと思うのだけれど。
強くなろうとする姿が。
強くあろうとする姿が。
本当は守りたいのだけれど。
お前の望む未来を指し示したいのだけれど。
お前の願いなんて叶わなければいいと思う。
その手掛かりさえ、許せない。
叶わない限り俺だけを見てくれることも無いのだろうけど。
叶っても俺だけを見ることは無いだろうから。
お前の つよさ の為に。
お前には 出来ないと、俺もあいつも知っているから。
お前の 優しさよわさの 為 に。
お前の願いなんて ダメだよ?
俺の為に 居てくれなきゃ、ね?






 そう思っていた。この子がまだ12の頃は。






 本当に望んでいるの。
 そう問い掛けたとき、サスケは驚きに固まった表情でカカシを見つめた。
 その眼差しは今更何を問うのかと、当然だろうと、不思議そうな色をしていて、変わらないサスケにカカシは小さな笑みを見せた。
「本当は、一族の復興が無理なことくらいなら分かっている」
 ぽつりとサスケは呟いた。隣に居るカカシを見ずに真っ直ぐに、只管真っ直ぐに前だけを見る。
 目指すものだけを見る眼で。
 貪欲に欲しがる眼で。
「うちはの復興が無理なことなら分かってる。うちはの集落からすら出た支族でも生き残っているなら話は別だろうが、俺独りしか居ないのだから、無理だ。うちはの名が残ってもこの血は残らない。なら、復興なんて掲げるだけ虚しいだけだ」
 淡々と紡ぐ言葉は確かに現実を知って、受け入れているもので、だからこそカカシはどうしてと訊いた。
 そんなにも分かっていたのなら如何して、と。
「そんなの決まっている」
 サスケは漸くカカシを真っ直ぐに見た。カカシ曰く、貪欲に求めるものを求めるその眼で。
「アンタに簡単に堕ちない為だ。アンタの傍は居心地が好過ぎて、好くない。俺にとって好くない。確立出来切ってなかった餓鬼だった俺には好くなかった。アンタに溺れて、俺一人じゃ立てなくなる」
 そんなのは御免だ。
 アンタだってそうだろう、と矢張り言葉にはせずに眼で訊いてくるサスケにカカシは曖昧に笑って答えた。
 サスケはカカシのこの答え方に自分との同意と見るだろう。今までの付き合いからなる経験で。
 本当は違うのだけれど。
 本当は溺れて、独りでなんて立てなくなってしまって欲しかったのだ、なんて想像もしないだろう。サスケは。
「一族の復興を掲げているうちは誰かに恋なんてしない。していても錯覚だと言い聞かせられる。復興に必要なのは恋でも愛でもない。優秀な遺伝子だけだからな。
 だから俺は気付いていないと思い込ませた。アンタの優しさの何も全部“俺がうちはだから”だと。
 でも、ちゃんと自分で立てるようになって、それでもアンタは変わらずに俺を好きだという。だったら、俺がアンタのその手を取ったって許されるだろう?だから俺はあの日のアンタの言葉を受けたんだよ。俺もアンタと一緒に居たいと思っていたから」
 なのに、お前はまだ望んでいるの。まだ、あいつのことは諦められないんだ?
 カカシはゆっくりと言葉を告いだ。決して問うこの声が震えないように。サスケに自分が抱えている不安を見抜かれないように、カカシは慎重にそう訊いた。その所為で飄々とした常の雰囲気は消えてしまったかもしれないけれど。
「そりゃあ、な。理由と決心が違うんだ。当然だろ。
 俺はあの人の弟だから。兄さんのたった一人の家族で弟だから。兄さんが舞台の幕を上げた以上俺が幕を引くべきだ。
 憎しみじゃないし、義務でもない。これは俺の正当な権利だ。俺だけに与えられた権利だ。
 兄さんは俺だけ残してくれた。醜く生きろと。醜くとも生きろと。
 言葉を託された俺にしか出来ない。俺以外には殺されない、と兄さんは言ったんだ。俺がやらなくてどうするっていうんだ」
 呆れたように溜息をついて、それでもまだ遠いけれど伸びて近くなったカカシの隠れていない右目を真っ直ぐに射抜いた。
「だから俺は兄さんを殺す。アンタが止めたがっていたのは知っている。でも俺は殺すよ。アンタには悪いけどな。
 アンタはアンタのエゴで俺をアンタのトコに押し留めたがった。俺は俺のエゴでアンタのエゴを破る。でも、戻って来るんだ。いいだろう?」
 自分よりも子供に言い聞かせるようにサスケはカカシに言った。
 カカシを見てサスケは困ったように、照れたように言葉を重ねる。
「アンタと俺の望みは同じで、アンタと兄さんの願いは同じで、俺と兄さんの想いは同じだ。
 だから俺は行って来る。アンタは俺を出迎えてくれるんだろう?」
「腕を広げてここで待っているよ。抱き締めてキスをして、お帰りって笑うよ」
 カカシは漸くちゃんと笑顔を見せた。カカシの顔は見えている部分が少ないけれど、それでもサスケはそれがきちんとした笑顔であることを見て、自分も小さく笑う。
「俺が暫く居ないからって飯抜いたりすんなよ」
 暮れ逝く夕陽のなかサスケは僅かに語調を強くした。









 翌日未明、うちはサスケを隊長とした暗部少数精鋭、
抜け忍・うちはイタチの抹殺命令作戦開始。





        Fin





 この話の冒頭は高1のときの模試の余白に書いたものです。4年前?
 あれだけで終わらせようかと思ったのですが、折角なので書いてみました。
 サスケがとても強くなったので冒頭のカカシが霞みます。なのでちょっと細工します。薄文字がそれです。これで前後関係が少しはマシかな、と思います。(暴露しなくても)
 これはサスケ18以上が希望です。
 本誌ではサスケはイタチのことを兄貴と呼んでますが、私は兄さまと呼んで欲しいのを、ぐっと堪えて兄さんで妥協しました。サスケ絶対お兄ちゃんっ子だったと思うし。
 カカシの台詞が最後のまで「」を付けなかったのはわざとです。
 憎しみでは殺さない、という話です。
  脱稿04/04/10    微妙に改稿06/02/09
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