あたしのいちばんはいつだってあなただけ






宣戦布告






「覚悟してくださいね」
 ずびし、と。
 音が鳴るほどに力を込めて乱菊は目の前の少年を指さす。
 彼女が終生膝を折り、首を垂れ、忠誠と敬愛を捧ぐ無二の長に、これ以上ない真摯な思惑を込めて、宣言する。
 あの年のあの日の思いを凌駕することがどれほど骨の折れることか、乱菊は誰よりもよく知っている。還らない思い出と化したものがいかに大切な色を帯びるのか。
 けれど、乱菊はそれを共有するもう既に唯一であり、何よりも大切な日番谷の為に、何よりもどんな時よりも力強く宣言する。
「覚悟してくださいね」
 還らないものは酷くうつくしい。だが、続くものは、共に歩むものは、それを超えて重ねることができるのだ。
 失われる一瞬で消える華は美しい。季節外れに咲いた華はこんな今を予言していたのかもしれない。けれど。
 乱菊は決めている。
 あの年より、今を。今を。今を。今を。今を。
 重ね続ける、その年の今が一番うれしいと。これに勝るものはないと。必ずや毎年、日番谷に言わしめる。
「覚悟してくださいね」
 日番谷の思い出を塗り替えて塗り替えて塗り替えて、必ずや今年が。
 一番うれしいと。
 日番谷がいることの喜びも幸福も、余すことなく伝えて。
 彼の生誕を祝うのだ。 ともに。





                               Fin
 藍染離反後のその年の誕生日(を控えて?)。
 おめでとうとも、祝っている感じもないのですが、それは題名通りなので。乱菊の覚悟、あるいは至上命題。
 若干日←乱な十番隊主従。






「松本」
 乱菊の宣言中、書類から顔をあげようともしなかった日番谷は執務机を挟んで仁王立ちする副官をちらりと見やり、小さく笑う。
「仕事しろ」
 それから、握り拳で何事かを叫ぼうとする松本の口をふさぐように、笑う。筆こそは置かないものの、正面から松本を見つめて、やさしく慈しむ顔で笑う。
「ありがとう」