夢見るように、終わって。






あなたの呼ぶ声が 奪って、






 慣れ親しんだ家と家族に別れを告げる。それが文字通りの“別れ”となることと日番谷は既に覚悟していた。
 ある意味、心残りと云えた日番谷の生き道が決まれば、祖母のようであった彼女が転生の門をくぐるであろうことはわかりきったことだった。
 潤林安から精霊廷へ振り返りもせず歩き続け、決断を迫った女死神の霊圧けはいに触れるところで漸う足を止める。門は既に日番谷の目の前にあり、後ろには当然誰もいない。
 日番谷が、最後まで見届け守りたかったものは。彼の家族は、何処にも。
「来たわね」
 足を止め、動かない子どもに仕方なく死神は声をかけた。ぴくりとも動かず、日番谷は首だけを返した。
 透き通るように美しい翡翠に移るのは悔愁か。幼さに似合わぬ透徹した色味が慥かにかなしかった。
「寂しい?」
 首を傾げ問う死神に日番谷はその大きな眼が引き立つようにゆるりと瞬きをひとつ。開いた先に色はない。
「また、呼ばれた」
 問われたことに答えず、端的に告げれば死神は微かに警戒を見せる。日番谷は小さく笑った。促されたことに、自分が傷つけてしまうことに。行く道を決めれば、彼の氷龍は先日の激しさが嘘のように静まり返りたる氷原で告げる。
「だから呼んでやろうと思って」
 ずっと、知らぬふりを続けたのはおだやかさが愛しかったからだ。必要ではなくなっても、続けていたのは怯える周囲をおいて尚、日番谷にとってやさしいひとを優先させたいと望んだことによる。
「氷輪丸」
 まさか、お前がそんなに耐えられなくなっているとは思わなかった。強引な揺さぶりをかけるほどに飢えていると見抜けなかったのは落ち度だったと日番谷は落ち着ききった声で呼ぶ。
 二度と離すことのないであろう半身を。
 近くで息を呑む音がしたが、それを気にしようとは日番谷は思わなかった。晴れた空に暗雲が呼び起こされようとも、ただ、馴染む掌の感覚があることでよかった。





                     Fin
 12/17発刊から妄想。
 幼いひつはかわいいな、カラーもかわいい。初々しくて。なんてにまにましました。
 彼は5年くらいでは少しも変わらないらしいです。霊力があるとおなかが減るとあったけど、高いと成長が遅いとかもあるんでしょうかね。だとしたらどれだけ潜在能力があるんだろう。
 さて、ひつを死神にさせたのは松本さんでした。隊長として迎えたときびっくりしたでしょうね。
 この話を読むと、ひつはどうもやっぱりすごいひとらしい。(戦いでは負けさせられてばかりだけど。なんでだ、作者)
 死神になる前に斬魄刀が自己主張するのって初めてですよね。対話して名前を知らないといけないのに名乗りに来ましたよ。気が早い。




2007/12/17
2008/01/21