狙われた者。






「そういえばさ、さっき師匠がクサウズとか言ってたけど、それってなに?」
 キョロキョロと辺りに目を配りながら結太は聞いた。
「トリカブトのことだよ。」
 なんでもない、というような口調で英明は言う。
「トリカブトって、あの猛毒の?」
「そうだよ。まあ、生薬にもなるんだけどね。」
 そうなのかと結太と真人は素直に頷く。
「ああ、結太、そこの茸は食べられるよ。」
「んーと、これか?」
「英明、この実は食べられるよな?」
「うん、大丈夫。」
 こんな会話を繰り返しながら三人は森の奥へ進んでいった。
 更に歩くこと数十分。
「こんにちは」
 突然後ろから声をかけられて三人は声のした方を向く。視界の下の端に姿を見つけたので視線を下ろした。
(子供…?)
 英明は眉を顰める。結太はごくごく明るく問い掛けた。
「どうした?迷子か?」
「いいえ。僕、麓の村のものです。食料を採りに来たんです。」
 無邪気に笑う姿は別段変わった所はないように思えるし、真人と結太は少年と楽しそうに話している。しかし英明は何処かに引っかかりを覚えた。それに勾玉のある右手が何故かズキズキと痛む。
 英明は少年を見据えた。まだ警戒は解かない。少年の手から何か出ているのがフッと見えた。
(糸…?)
 その糸を悟られないように目で追っていく。
 背中を冷や汗が伝う。グッと弓を握った。
(一か八か…気付けよ?)
 弓を構え、一念を込めて空に光の矢を放った。心なしか勾玉が熱くなる。矢は真っ直ぐ上に飛び空に溶けた。
「何したの?今。」
 少年の声に真人と結太が振り向き視線を送る。
「試し打ちさ。」
 唇だけで笑いながら英明は少年に弓を向けた。
「英明、なにやってんだよ。」
「お前は何者だ?後ろの奴らは手下か?」
「「え?」」
 真人と結太は緊張を走らせる。少年の顔から人なつこい笑顔が消えた。
「流石だネ。」
 言い様ギギッと音がして少年の後から木人形がたどたどしい動きで現れる。
「なんだよ、こいつら!」
 慌てて二人は剣と槍を構える。
「僕の人形たちダヨ。」
 少年は嬉しそうに笑い、木人形たちの後ろへ飛び下がった。
「六体…一人二体か。」
「ど、どうすんだよ。」
「落ち着け、真人。こいつらは多分ただの人形だ。後ろのあいつが操ってるはずだから、あいつを倒せばこいつらは倒れる。」
 英明は努めて冷静になるようにした。
「ご名答―。でも僕まで攻撃が届くとイイネ。」
 少年が手を広げ、木人形たちが動き出す。
「俺は奴を狙いながらお前らを援護する。二人して一体ずつ倒していけ。」
 指示を出しつつ英明は矢を発生させる。
(早く気付けよ…浩多!)
 もう一度、空へ向かって矢を放った。


「翔太郎くん、僕のこと呼んだ?」
「ううん。」
 翔太郎は首を横に振り、浩多は首を傾げる。
「空耳かなあ。」
 ポツリと言い、再び周りに目を向ける。右手の勾玉が淡く光っているのは気のせいだろうか。
「あれ?なんだ?あの光。」
 良平が指さす方向を翔太郎と浩多は向きハッとなる。
「浩多さん、あの光って…」
「…英明さんの矢だ。」
 翔太郎がいち早く走り出した。
「おい、どうした?」
「行くよ、良平くん。」
「は?」
「敵だよ、きっと。英明さんたちが危ない。」
「なぬっ!?」
 敵、と聞いて良平も走り出し、すぐに浩多に追いつく。
「どっちだ?」
「多分、近づけば勾玉が光るよ、ほら。」
 と言って浩多は右手の甲を良平に見せた。





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 お次の敵。戦闘は次。
 彼、が覚醒めます。