全員集合






 ザ、ザザザザザ
 つっきるように走りきって星史は野原に着いた。
 ちゃんと翔太郎も良平もいてとりあえず安心する。
「翔太郎」
 あたりはもう暗闇に近いが、まだかろうじて夕陽の名残と月が照らす。
 これならばそんなに暗くなりきることもないだろう。
「あ、星史さん!…って、あれ?真美子さんと森川さんは?」
「ん?ああ、ふたりはおいてきた。また仲間とねぐらが見つかったから。」
「そ、そうなんですか?」
「ああ、総勢一六…真美子入れて一七だな。」
「そ、そんなに…」
「もっといるかも知れないぜ?」
「え、ええ!!」
「翔太郎。ちょっと声でかい。」
「す、すいません。」
「別にいいけどね。」
 くすと星史は笑い、翔太郎の頭をぐりぐりと撫でた。
「お前って素直でかわいいな。」
「せ、星史さん。嬉しくないですよ、かわいいなんて。」
「そうだろうな、俺も嫌だね。」
 翔太郎の隣に星史も腰を下ろした。そのまましばし話は続き、
「すまない。遅くなった。」
 克己の詫びは、ほんの僅かに見せていた太陽が隠れてからだったが、星史がついてから十分も経っていなかっただろう。
「別に。大して経ってないさ。それ、獲物?」
 克己が肩に棒を担ぎ、その後ろには鳥らしき物が逆さに下がっている。
「ああ、簡易の弓矢を作ったんだ。一番楽だったからな。羽山と彰が意外と上手かったおかげだな。」
「こいつは当てるくせに、上手くはずすんだよ。羽根の間とかに。」
 彰が後ろから出てきて逆の肩に手をかける。克己は苦笑していた。
「真美子ちゃんと森川は?」
「あ、はい…」
 説明しようとした翔太郎を星史は制す。
「歩きながら話す。それよりこのバカどうする。」
 星史は立ち上がり足元でまだ気を失っているらしい良平を靴先でつつく。
「起こすか。それにしても長いな…彰?」
 克己が振り返る。
「俺の所為じゃねぇよ。こんなに長いはずねぇもん。」
「あのっ、すいませんっ。」
 立っていた翔太郎が勢いよく頭を下げる。
「どうした?」
 頭を上げてと星史に促され、上げた顔は月と星明かりでもわかる程赤い。
「途中で良平くん起きちゃって。何処かに走っていきそうだったんで…その…」
「気絶させたと。」
 やるじゃんと笑う星史に慌てて首を振る。
「ちょっと転べば平気かなと思って、足がかかったら…また気絶しちゃったんです。」
「いつぐらいだったかな。」
 克己が優しい声で尋く。
「えと、星史さんが来る少し前です。」
 克己の目が星史の方を向く。
「無理だ。十分少しじゃ起きない。」
 星史の断定に克己は溜息を吐き、彰の逆隣、ちょうど肩に担いでいた棒を英明に渡す。
「悪いが持ってくれ。俺はこっちを持っていこう。」
 克己は良平を担いだ。


 彼らは薄暗い林の中を突き進んでいた。
「やっぱり他に仲間がいたのか。」
 星史が浩多と出会ったことなどを一通り説明した直後に、ポツリとこぼれた大輔の言葉。
「合計一七人か…。随分な人数だな。」
「そこで問題があるんだが…」
と星史は言いかけたがすぐに止まってしまう。目的の場所に到着したからだ。星史が引き戸を開ける。
「おっ、来よったか。」
 京介が笑顔で七人を迎える。
「話は真美子様から聞いております。どうぞ中へ。」
 雪乃が彼らを招き入れ、中にいた全員がつめていく。その中に誠がいるのに気付き、彰がやっぱりという表情を浮かべる。
「んだよ。お前もいたのか。」
「小早川先輩!?あっーっ!キャプテンも!」
「なんや、知り合いか。…ところでどないしたんや、そいつ。」
 京介の一言で、翔太郎の顔が赤く色づく。克己は良平を床に降ろし、「ちょっとな」と言葉を濁す。その様子を見ていた浩多がまた何かとんでもないことを考えたらしく…、
「雪乃さん、水を入れた桶を持ってきてくれませんか?」
先に神社に来ていた連中の顔が変わった。
(こいつ、絶対アレをする気だ。)
 浩多の性格を知らない人たちは、何をする気なのかと不思議に思う。しばらくすると雪乃は桶を持ってきた。ただならぬ気配に真美子は勇気を振りしぼって聞く。
「あの…。何をするんですか?」
 浩多が狭いのを無視して良平に近づく。やっと気付いたのか、星史と克己、大輔が彼を止める。
「やめろ!そいつを起こすな!」
「そうだ。藤沢が起きると面倒だ。」
「でも、起こさないと話にならないから。」
「嫌、かえってこのままの方が話になる。」
 三人のことなど無視をし、浩多は良平の頭を掴み、そのまま水の入った桶に…。慌てて三人が止めようとするが、狭いため上手く身動きがとれない。もがいているうちに浩多が遂にやってしまった。
「あっ!?」
 雪野と真美子の短い叫び声。一同、唖然としてしまう。浩多はためらいもなく良平の顔を水につけたのだ。数秒だったか数分だったかも知れない。水面から気泡が出てきた。良平がもがき始める。
「う、う〜〜!?」
「あ〜!放してくださいっ!良平くんが死んじゃう!!」
 真っ青な顔をしていた翔太郎が叫ぶ。それにつられて、他の人も…。
「それぐらいにしときいや!」
「浩多、よせ!」
 浩多が手を放すと、良平が勢いよく水面から顔を上げた。
「ぷはぁ!?てめぇ、何しやがんだよ!?」
「嫌だな。冗談だよ、冗談。冷たいとよく眼が覚めるって言うじゃないか。」
 絶対零度の微笑。閉めきった空間内の気温が、一気に降下する。良平は本能的に身の危険を感じ、言い返そうとはしなかった。良平にしては賢明な判断。一同、絶対に浩多を怒らせてはいけないと再確認する。
「雪乃さん、話してください。」
「あ、はい…」
 浩多に促され、雪乃は前者八人同様に、真美子たちにも説明をした。良平以外は今の状況を理解できた。そう、良平以外は…。
「説明も終わったことやし、自己紹介といきまっか?」
「待ちやがれ!全然わっかんねぇー。」
「…本当にバカだな、お前。」
「んだよ!?」
 睨み合う良平と彰の間に割り込む克己と翔太郎。
「良平くん。要約するとね、僕たちは昔にタイムスリップしちゃったんだよ。」
「それで、真美子ちゃんを守れば良いんだ。わかったか?」
 『守る』という言葉に反応してしまう真美子。今イチ自分の存在の重要性がわからない。なんの変哲もない普通の女の子だったのが急に『央の君』と言われて、守られる立場になったのだから無理はない。
「…つまり、またアイツと戦えるのか♪」
「あいつとは…?」
「ああ、俺たち、ここに来る前に卯月という少女に襲われたんだ。」
「卯月…」
 大輔の言葉に雪乃の表情が硬くなる。
「覚醒めていないのに、よくご無事で。」
「覚醒める?卯月は妖術とも言っていたが…。詳しく教えてくれ。」
 ランランと瞳を輝かせ、大輔が雪乃に詰め寄る。
「そうですね。その前にこれを…。」
 雪乃が一六個の武器を並べる。すると、一六人の勾玉が一斉に光り始めた。
 一筋の光。それは一つ一つの武器へと導く。
  星史は『春』、結太は『青』、洋樹は『木』、良平は『朝』と書かれた槍。
  克己は『秋』、健太は『白』、京介は『金』、大輔は『夕』と書かれた太刀。
  真人は『夏』、誠は『赤』、遼は『火』、翔太郎は『昼』と書かれた剣。
  英明は『冬』、浩多は『黒』、竜馬は『水』、彰は『夜』と書かれた弓。
 恐る恐る皆、武器を手にする。
「槍は青龍、太刀は白虎、剣は朱雀、弓は玄武の破片かけらと言われています。これで属性がわかりますね?」
「雪乃さん、私は?」
「央の君は存在そのものが大切なのです。覚醒めれば、武器を持たずとも他を圧倒する力を手にします。」
「へえー。」
「…妖術のことは明日でもよろしいですか?皆さんお疲れでしょう。今、九人分の食事を用意します。」
 雪乃が食事を作っている間、全員、自己紹介する。また京介の提案で、できるだけ下の名前で呼びあうことになった。(これを実施するのは数人だと思われるが。)
 食事が済んだ後、良平が寝ようとするのを星史が止めた。
「待てよ。こんな狭い中で全員が寝られると思ってるのか?どう考えても無理だろ。」
「んじゃあ、どうすんだよ!」
 星史と浩多が顔を見合わせ、ニヤリと笑った。
 晶子の部屋を使わせてもらう真美子を除いて、屋内で寝ることができるのはせいぜい十人だと判断された。
 星史と浩多に問答無用で追い出された良平と誠は別にしても後四人は外で寝なければならない。
「どうするか…」
「あ、あのっ」「俺っ外でいいです。」
 誰の、とは言わないが無言の圧力に負けて名乗りを上げたのは健太と結太である。こういう場合覇気の薄い者が負ける。
「悪いね。あと二人…。誰か年長者がいた方がいいかもな。」
「んなら俺が出る。」
 彰がひょいと立ち上がった。
「男同士で寿司詰めなんてゴメンだしな。」
「結局女の子は真美子さんだけでしたもんね。」
 女の子目当てで来たのに、と悪気0で言った翔太郎の襟を彰がつかむ。
「いらねえこと言うならお前も外に来い。」
「はぁい」
 彰の声に含まれる怒気にも気付かず、翔太郎クン良い子のお返事。こうしてあっさりと外で寝る六人は決まった。本人が納得しているかは別として。





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 16、18人が一同に出来るのはかなり広いと。
 浩多は黒い道を一直線。間違っても彼の真似をして死にそうになるまで人の顔を水の中で押さえつけてはいけません。
 星史は翔太郎がお気に入り。