はじまりの出会い。其の弐






 真美子たちが出現した地点から北西に約三キロ離れた所に、前者たちと同様に四人の少年が出現した。
「んだよ、ここ…」
「あー、せっかくのデートがぁ!」
「…イマイチ状況が把握できない…。」
「僕、埼玉スタジアムにいたんだけど…。」
 四人の少年は顔を見合わせ、同時に呟いた。
『どうなってんだ?』
 外見がどこか大人っぽく見える少年が一つため息をつく。
「今の状況を理解する前に、君たちの名前を聞いておきたい。ちなみに俺は塚本大輔、十八歳、高校三年。」
「俺は藤沢良平、高一。」
 どこにでもいそうな悪ガキの彼が面倒臭そうに答える。
「僕は野中翔太郎、高一。よろしく。」
「ってことは俺がこの中で最年長か。小早川彰、武蔵野森学園大学三年。」
 一通り自己紹介が終わり、大輔は一安心する。こんな状況に陥った中で三人と協力し合わなければならない。見たところ三人とも普通だ。
「なあ、俺たちどうなったんだ?せっかくの試合だったのに。」
「ああ?うるせぇな。俺はデートだったんだ。どうしてくれるんだよ。」
 良平と彰が大輔に迫る。そんな二人をなだめるため、間に割り込む翔太郎。
「もめる前に、ここがどこなのか確認するべきじゃないかな。」
「野中の言う通り。どこかに飛ばされたんだと思うんだが…」
 大輔が辺りを見回すのに連れて、残りの三人も。見渡す限りの野原。
「なぁーんもねぇな。」
「次。これは何だ?」
 彰が右手の甲を皆に見せる。
「…勾玉?」
「あっ!野中のおでこにも!」
「えっ?」
 慌てて翔太郎は額に手を当てる。何か変な感触。
「俺は左手…。」
「ええっと、俺は…」
 自分の全身に目をやる大輔の鎖骨の辺りを彰が指を指す。
『そこ』
「…本当だ。」
 四人のの間に沈黙が訪れる。だが、数十秒後、それは良平によって破られた。
「考えてもラチがあかねえ。考えるより行動しようぜ?」
「待て。下手に動かない方がいい。」
 歩き出す良平を大輔が止める。最初に比べて彼の表情が固い。
「ここがどこだかわからない以上、動いたら危険な目に遭うかもしれないだろう?」
「俺は良平に賛成。」
「僕も良平くんの意見の方が正しいと思う。」
「三対一で決定。行こーぜ。」
「行くってどこにだ?」
 決定事項に不服そうな大輔。そんな彼に良平は左手の勾玉を見せる。
「さっきからあっちの方向にかざすと光るんだ。多分、あっちに行けばわかると思う。」
「えーっ?行っちゃうの?」
 突然の背後からの声に四人は振り向く。
 耳下くらいの黒髪。少しつり上がった目尻。時代劇に出てきそうな忍び装束。推定十七歳の、弓を手にした少女。さっきまでこんな少女はいなかったはずだ。
「殿様方、私、卯月と遊びましょ?」
 ニッコリと笑う少女には殺意がみなぎっていた。本能的に良平は身構える。彰は口笛を吹く。
「かっわいー!いいねえ、俺の好み。気の強い女は嫌じゃない。」
 大輔はがっくりと肩を落とす。
(前言撤回。藤沢と小早川も普通じゃない…。)
「ありがと。本当はあなた達と同じ状況になった女の子に用があるんだけど…。いない、みたいね。」
「女の子?俺たちの他にもいるのか?」
 大輔の質問に少女は答えた。
「ええ。でも会えないわよ。あなた達はここで死ぬんだから。」
「!」
 少女が矢を放つ。反射的に大輔はよけた。
「うわぁ!本物の矢だ!」
 地面に刺さった矢をまじまじと見つめる翔太郎。殺されそうな状況なのに、なんて間の抜けた言葉だろう。
「まだ妖術、使えないのね。これなら楽だわ。」
「楽?四対一のどこが楽なんだ?」
 良平が真っ先に少女に蹴りかかるが少女はあっさりとかわしてしまう。
「なっ!?」
「藤沢!武器を持ってないこっちが不利だ。逃げるぞ!」
「ヤだね。売られたケンカは買うもんだろ?」
「おい、女の子に手を出すのは賛成できないぜ。」
「良平くん、危ないって!」
 良平以外、皆、安全な距離を取る。良平は三人の言葉に耳を傾けず、少女へと立ち向かっていく。結果は誰が見てもわかる。大人と子供の喧嘩だ。良平はそれなりに喧嘩慣れしているようだがどの攻撃もあっさりとかわされてしまう。
「…あのバカ…。」
「どうする?助ける?」
「いや…。勝てない。あの卯月って奴、身軽だから素早い。攻撃を入れるのは難しい。」
 何か方法はないかと必死に考える大輔。
「ねえ、あの子が言ってた妖術って?」
「知るか。ゲームでもあるまいし、そう言うモン使えるはず無いだろ?」
「でも試す価値はあると思うけど?」
 翔太郎は二人に笑顔を見せ、走り出した。
「あ、おい、待て!」
「…ほっとけよ。あいつらが死んだって関係ないだろ?」
 彰の冷たい視線。大輔は頭痛を感じる。
 敵に向かっていった翔太郎は敵の正面に立ち、瞳を閉じ集中する。
「クス。無理よ無理。そんなんじゃあ妖術は使えないわ。」
 少女は背後からの良平の攻撃をかわし弓を構える。
「バイバイ。選ばれし者。」
 矢を放つ寸前、大輔が声をあげた。
「あの光、何だ?」
「――――あ、あれは。」
 遠くに見える一本の光の柱。少女はそれを見て、不敵に笑う。
「見つけた…。あそこね。」
 少女は彼らに背中を向け、光に向かって走り出した。
「待ちやがれ!」
 良平が少女を捕まえようと手を伸ばした瞬間、忽然と少女の姿は消えてしまった。
「…んだ?」
「消え…た…。」
「どういうことだよ!?」
 良平、翔太郎、彰は呆然と立ちつくす。そんな中、約一名冷静でいる大輔。
「…どうやら俺たち、とんでもないことに巻き込まれたみたいだな。」
「フザケンナ!まだ決着ついてねぇーぞ。」
 良平は光に向かって猛ダッシュする。慌てて大輔も。
「待て!あの光は俺が見つけたんだ。俺が調べる!」
「…アイツ、さっき言ってたことと違う行動してねえか?」
「うん…。」
「何であんなに熱いんだぁ?」
「さあ…?」
「あの良平って奴、足早いな。」
「うん。」
 妙に冷静な彰と翔太郎。二人は顔を見合わせ、やっと二人を追い始めた。
 協力性のないこのチーム。先はまだまだ長い…。





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 とりあえず、全員登場です。これで主体メンバーの笛は全員ですね。
 この話は彼らだけで。区切りがおかしくなってしまうんで。