再生への序章






 人々の驚きを意に介さず、無邪気に夏依に懐いているような慈朗よりも、苦虫を百匹は噛み潰したような顔をしている方を問い詰めることを彼らは選んだ。
「跡部?さっきのは一体どういうことかな…?《
 青い眼が射抜くようだが、恐いほどの笑みを刻み込んで周助は自制を利かせつつも禍々しい空気を撒いて景吾に詰め寄った。魔王・周助サマご降臨、とは横目で見ている幼馴染みふたりの心の呟きだ。自分に向かって降ろされたことはただの一度もないが、見ることだけはよくある。
「さっきってのはどれのことだ?アーン?《
 慈朗の発言にはかなり怒りが呼び起こされた景吾も喧嘩腰で相対する。もともと、景吾と周助の仲は蛇とマングース的な仲の良さだ。
「全部だよ《
「ジローのプライベートは奴に訊きな。もうひとつのは、おい、ジロー!てめぇ、夏依とじゃれてねぇでこっちに来い!《
 はっと鼻で笑ったのと一変して景吾は慈朗に怒鳴りつけた。
「ああ。勿論、夏依もだよ《
 にっこりと萩之介は言った。周助は無自覚のうちに幼馴染みには魔王化をすることはないが、萩之介の場合は彼のなかで間違いなく優先順位一位の夏依であっても、魔王化するときはする人である。
 徐々に離れようとしていた慈朗が来るなり、周助は真黒なオーラを渦巻かせながら問い掛けた。
「オレ、留学中だから、自分の国に連れてけば夏依捕まらないですむっしょ?オレ、夏依好きだから、夏依とずっと一緒にいられたら幸せでうれC《
 にぱにぱと慈朗は答えるが、自分の身の上にはもう触れない。触れさせるようにも答えない。言っても問題ないが、言う必要はなく、知らなくても何ら上自由がないのだ。
「じゃあ、どうしてあの後にそんなことを言うんだい?士気が下がったら夏依が困るのに《
 ふわふわとした雰囲気を纏っている慈朗には、流石の上二であっても魔王で居続けるのは難しいようだった。
「だって、今しか言う機会なくね?オレ、一緒できないから今言っとかないとって思った。失敗した後じゃ遅いC。皆、夏依ちゃん好きだC。へへ。だって、言ったモン勝ちっしょ?《
 慈朗と周助の問答を耳に入れつつ、逃げないように手首を摑んで、慈朗たちとは少し離れた場所で萩之介も夏依に尋問していた。
「どうして慈朗のお誘いを断らなかったのかな、夏依?《
「萩、まさか失敗することを念頭に置くのか?《
 驚く夏依に萩之介は溜息をついた。
「俺はね、きみが慈朗に甘いと知っているだけだよ《
 自分たちが注目させていないことを確かめてから萩之介は摑んだ夏依の手を持ち上げた。指先の方へ萩之介は自分の手を滑らせ、軽く腰を折る。上目遣いで夏依の眼と意思を自分に絡め、萩之介はゆっくりと眼を伏せていきながら掌に口吻ける。
「万が一のときは、慈朗より先に俺が攫うから覚悟しておいて《





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 滝勝ちです。本当に失敗したら本当に攫います(失敗しません)。上二と滝が出るといい感じに笑顔の花が咲きますが、もう一人笑顔が攻撃の標準装備なひとがいるのでいつかフルで出したいですな。
 滝の魔王化現象ですが、勝てる勝てないはその時々で別ですが、にっこりと怒ることはあるのです。にっこりでなく怒ることもあります(書くかわからないけど)。上二よりもちゃんと怒る。
 キスはする場所で意味が違うらしいです。因みに掌にするキスは懇願の意味だそうです。