ある休日の午後
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溢れるように人がごった返す休日の渋谷。 「志保さん?」 街中で偶然すれ違っただけなのに。 すれ違う時にちらっと見えた横顔だけでわかっちゃう自分がいる。 「え・・・?」 ゆっくり振り返る時に揺れる髪。 「もう、忘れちゃった?」 目が悪い彼女は少しだけ眉間に皺を寄せて俺を見る。 「黒羽くん?」 俺と彼女の関係は・・・今風に言うと『元カノ・元カレ』ってやつで。 大学に入って一目惚れした俺が、必死になって口説き落として付き合いだした。 「久しぶり〜。髪伸びたんだ。似合うvv」 薄い茶色の髪が日の光に透けて、金色に光るのが好きだった。 「ほんと・・・久しぶり・・・。」 冷静で、表情を余り表に出さない彼女にしては珍しく、本当に驚いたように目を見開く。 グレーのビー球みたいな瞳と、それを縁取るラインも大好きだった。 「今、時間あるの?」 彼女は腕時計を右につける。 右利きなのにどうしてって聞いたら「利き腕の方がとっさに見やすいじゃない?」って言ってたのを思 い出す。 左腕につけた時計を見ながら「ええ。」って頷く彼女。 少し低い所から見上げるようにして顔を上げた彼女は、あの頃と変わらずに、いや、あの頃よりも更に キレイになってて――――― 俺は少しだけ後悔した。 運ばれてきたばかりの温かいカフェモカを口に運ぶ。 「志保さんのその髪の毛ってやっぱりキレイっっ!!どんな人ごみでもずぐに目が行っちゃうよ。」 「相変わらず・・・口が上手いのね。」 そう言ってクスクス笑う彼女。 判りにくい表情だけど、彼女のこの笑顔は『ありがとう』って意味。 「黒羽くんは相変わらずね。変わってない・・・。」 「ひっどー。かっこよくなったでしょ?少しは。」 大学二年の時に付き合い始めて、半年間だけ恋人だった。 二年の終わりにお別れして、3年からはキャンパスの場所が離れちゃって会えなくなっちゃったから、 今日会うのは一年ぶり・・・くらいになるのかなぁ? あの頃は肩先で揃えられていた茶色い髪が、今は少し背中に掛かってる。 「志保さんは変わったよ。外見だけじゃなくてさ。」 俺の言葉に首をかしげながら「何処が?」と聞く君。 「明るくなった。」 あの頃は誰にも頼らずに一人で生きてくんだって意地になってるみたいに気を張ってた。 自分の弱い所なんて恋人である俺にだって見せてくれないんだろうなぁって程に周囲から距離を置いて、 一人で戦ってるみたいだった。 俺はそれに絶えられなかったんだ。 今ならわかるよ? 一人で戦わないといけない事もあるって。 いや、俺はあの時も分かってたはずなんだ。 怪盗KIDとしてずっと一人で戦ってたんだから。 でも、俺は彼女を支えたくて、頼って欲しくて、結局我侭を言って困らせちゃった。 ごめんね。 きっと俺は何も分かってなかったんだ。 二人で居る事の意味も、恋愛がどんな物なのかも。 「ごめんなさい、もう・・・」 時計を見るともう8時を回ってた。 コーヒー一杯で何時までいるんだよ、と言いたげなウェートレスの視線。 「そっか。ごめんね、引き止めちゃって。」 「どうせ暇だったから、気にしないで。」 席を立ってレジに向かう。 「さっむー。」 温かい室内から一変、雪でも降ってきそうな程に冷え込んだ外の空気。 「久しぶりに会えてよかったわ。楽しかった。」 そう言って見上げながら笑う彼女の笑顔は今すぐに抱きしめてしまいたいほど可愛くて。 「うん、俺も。楽しかったよ。元気そうな志保さん見て安心した。」 そんな感情を必死で押さえながら、こんな感情を彼女の気付かれないように必死に何時も通りの笑顔を 作る。 「・・・・。」 「・・・・。」 「それじゃ。」 「うん。」 帰りたくない 「えっと・・・バイバイ。」 「ん。元気でね。」 帰りたくない 「・・・・。」 「・・・・。」 一歩下がって 反対向いて 背中を向けて歩き出す。 何でだろう 悲しいのか寂しいのか それとも両方なのか もう、こうしてまた、偶然に出逢う日まで会えないんだろうなぁ・・・。 二人の間の距離がドンドン離れていく。 帰りたくない もう少しだけ一緒にいたい 「黒羽くんっっ!!」 呼ばれて立ち止まる。 身体が熱くなる。 もしかして・・・ 志保さんも同じ気持ちで居てくれてた? 胸のドキドキを押さえてゆっくり振り返る。 「な〜に?」 おどけて言った俺のセリフに微笑みながら ちょっと離れた所から、 人ごみを抜けて俺に届く。 「来週の水曜日、さっきの喫茶店で。」 END ◇◆◇◆ 黎葵様からリクエスト頂いた『休日のバカップル』です。 え・・・?どこが・・・?ってゆうか『休日』しか合ってないじゃん? しかも休日だとわかるのは書き出しの1文だけ・・・(汗) 甘甘な感じにしたかったにも関わらず相当ドライ・・・。 コレってむしろ快志ってゆうよりも快→志だしね。 最近きちんとリクエストに答えられて無い気がする。(滝汗) 夏依さんっっっ!!本当にごめんなさい(><) ◇◆◇◆ |
ありがとうございます、ありささま。
そんなっ。十分素敵です!ちゃんと快志してますよ。
なんだかんだと8時まで喫茶店で喋り続けるのは愛情過多ですよ。
快斗が如何に志保のことを思っているのかが伝わってきます。
離れがたいのなんか!空白っていうのか(「…」というやつですが)なかなかバイバイできないあたりにひとり萌え。
「黒羽くんっっ!!」というのに愛を感じます。
このほんのり切なげテイストなのに、もうもうもう!
黎葵は幸せ者です。
(コメントは一部メールを抜粋させていただきました)
尚、アップが遅くなりまして申し訳ありませんでした。